"私の命を八千万円にした夫の末路" 第1話
カチリ、と。
で、プラスチックが折れるような乾いた音が響いた。
国沿いのディスカウントスーパー。 夕方のタイムセールで勝ち取った、パック円の特売卵を助席に置いた直のことだった。
齢。 塗装の剥げかけたの軽自。
私の実が、結婚するに持たせてくれた唯の財産だ。
を遮ろうと、運転席のサンバイザーに指をかけた瞬だった。
経劣化で脆くなっていた脂の留め具が根元から折れ、ぼったい板が音をてて私の膝のに落ちてきた。
「……うそ。壊れちゃった」
わず声が漏れた。 修理代にいくらかかるだろう。
今の活費は、すでに残が千円を切っている。 姑のにられたら、また舌打ちされる。
『これだから物のボロは。乗ってると同じで、い虫ね』
そう吐き捨てられる景が、まざまざと脳裏に浮かんだ。
ため息をつきながら、膝のに転がったサンバイザーを持ちげる。 その、内側の布の隙から、い透なビニール袋が滑り落ちた。
助席の元。 使い古したゴムマットのに、ペラリと落ちたそれは、何にも折りたたまれていた。
……何これ?
私は眉をひそめた。 この軽自の運転席に座るのは、私だけだ。
夫の修は自分のセダンに乗っているし、私のを「みすぼらしい」
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と言って触りたがりもしない。
拾いげて、広げてみる。
チャック付きの保袋のからてきたのは、つ折りにされた青い用と、い質の類だった。
青い用の見しが、に照らされて浮かびがる。
『自保険証券(搭乗者傷害・傷害特約)』
契約両は、まさに私が今座っているこの軽自。 ナンバープレートの数字も完全に致している。
だが、契約内容の欄に印字された数字を見た瞬、臓がトクンと嫌なね方をした。
【傷害補償保険:無制限】
【搭乗者保険:千万円】
【被保険者:佐伯真由(本)】
……千万?
指先がたくなる。
あり得ない。 私が毎、自分のパート代から切り詰めて支払っている通販型の共済保険は、最限の対対物賠償だけで、搭乗者保険など数百万円の最枠しかつけていないはずだ。
しかも、その青い証券の発元は、損保会社だった。 保険料の額引き落とし額は、万千円。
で万円い。
誰が、こんなを払って? 何のために?
震える指で、もう枚のい類をいた。
そこには、几帳面なフォントで印字された誓約のような文章が並んでいた。
タイトルは、こうだ。
『事故発における補償受領権限および示談交渉に関する包括任』
だが、本文の半分くが、から力な茶いガムテープで執拗に目隠しされていた。
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テープを剥がそうとしたのだろうか。 表面のごと毛羽って剥ぎ取られ、肝の条件部分の文字は完全に消えっている。
残された部の余。
そこには、鮮な朱肉の跡があった。
私の、親指の指紋だ。
朱肉の赤が、まるで乾きかけの血のように々しく繊維に染み込んでいる。
そして、その横に並ぶ署名。
【受任者・全権代理:佐伯修】
夫の名。 その横には、佐伯の実印が、歪みなく真っ直ぐに押されていた。
「……なに、これ」
喉の奥がカラカラに渇いていた。
私の親指の指紋? いつ?
私はこんな類に指印を押した覚えなど、爪の先ほどもない。
いや――待て。
たい汗が、背筋を本の筋となって流れ落ちた。
。 私がいインフルエンザで度のをし、識が朦朧として寝で倒れていた夜。
修が、私の枕元に類を持ってっていた。
『真由、会社の福利で、族の扶養控除の続きしなきゃいけないんだ。ペン持てないだろ。朱肉持ってきたから、ここに親指押しといて』
で目がかず、息をするのも苦しかった私は、言われるがままに指先を差しした。 あのの、親指に押し当てられた朱肉の、ひやりとした異様なたさ。
あれは、扶養控除の類なんかじゃなかったのか。
フロントガラスのでは、夕暮れのスーパーの駐を、買い物袋を抱えた主婦たちが談笑しながら通り過ぎていく。
自転のベルの音。