"私の命を八千万円にした夫の末路" 第3話
レナだった。
には、名百貨の袋がいくつもげられている。 借に喘いでいるはずので、彼女の浪費癖だけは止まることをらなかった。
「おかえり、レナ。今はずいぶん遅かったじゃないの」
リビングから、の甘ったるい声が聞こえる。 私に向ける声とは、周波数がまるで違っていた。
「ちょっと座のデパートに寄っててさ。見てよこれ、限定のバッグ。担当の商に頼み込んでやっとに入れたの」
「まあ、素敵ねえ。やっぱりレナには本物が似うわ」
「でしょ? でもカードの引き落とし、今ちょっとヤバくてさ。修兄ちゃん、なんとかしてくれないかな」
「丈夫よ。あの子もちゃんと考えてるわ。もうしの辛抱だから」
もうしの辛抱。
その言葉に、包丁をかす私のがピタリと止まった。
もうし、とは何だ? 会社の借は、あと何も返済が続くはずではなかったのか。
「ねえ、真由さん!」
レナが台所の引き戸をガラリとけ、値踏みするような線で私の背を睨みつけた。
「今のお茶、麦茶じゃなくてたい緑茶にしてよね。あと、蔵庫に入ってたプリン、私がべるから」
「……あのプリンは、修さんのの朝の分ですが」
「いいじゃない、兄ちゃんの分くらい。また買えば。どうせパート先で余ったやつ貰ってきただけでしょ? 貧乏くさい」
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レナは吐き捨てるように笑うと、カウンターに無造作にハイブランドのバッグを置いた。
その、彼女のスマートフォンがピリリとく鳴った。
画面がり、通のプレビューが界に入った。
【消費者融モビット:返済期のおらせ】
瞬だったが、はっきりと見えた。 レナは慌てて画面を伏せ、私を睨みつけた。
「何ジロジロ見てんのよ。気持ち悪い」
「……いえ。すぐにお茶を淹れます」
私は線を落とし、急須に茶葉を入れた。
百貨の袋を何個も抱えながら、消費者融からの催促。 このは、見を取り繕っているだけで、内側はとっくに腐り落ち、借の沼に沈んでいる。
その沼からいがるための「千万円」。
たいが、背をツーと伝った。
◇
午。 ようやく修が帰宅した。
「ただいま……」
くたびれたスーツ姿。 くなった肩を丸め、玄関で革靴を脱ぐ。
「おかえりなさい、修さん」
私が迎えると、修は瞬だけぎこちない笑みを浮かべた。 だが、その線は私の目を真っ直ぐに見ず、すぐに私の元へと泳いだ。
「ああ、真由。ただいま。……今もパート、お疲れ様」
「ううん。あなたこそ、遅くまで変だったわね。すぐにご飯にする?」
「いや、そのに……これ」
修は、コンビニのレジ袋を差ししてきた。 からてきたのは、透なパックに入った鯛焼きだった。
黄いシールが貼られている。
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【半額】
「駅で、ちょうどくなってたから。真由、甘いもの好きだったろ」
「……え?」
私はわず、そのパックを見つめてしまった。
結婚して。 修が私に、仕事帰りの産などを買ってきたことなど、度もなかった。 義母に「無駄遣いするな」と鳴られるのを極度に恐れていた男だ。
その彼が、半額とはいえ、私のために鯛焼きを買ってきた。
「どうしたの? 急に」
「いや……最、おにも苦労ばかりかけてるからさ。たまには、とって」
修の声は、どこか震えていた。 笑っているはずの元が、わずかに引きつっている。
「ありがとう。嬉しいわ」
私がパックを受け取ると、修はホッとしたように息を吐いた。 だが、そのの甲には、びっしりとや汗が浮いていた。
居に移り、での夕が始まった。
根と豚肉の煮物。 ほうれんのお浸し。 豆腐の噌汁。
私が作った質素な料理を、とレナは無言でに運ぶ。 普段なら「がい」「豚肉がい」と文句の嵐になるはずだった。
だが、今夜は奇妙な静けさが漂っていた。
が、わざとらしく咳払いをし、修に目配せをした。 修がビクッと肩を揺らす。
「あ、あのさ、真由」
修が、茶碗を置いて切りした。
「何?」
「のパート、何からだっけ」
「は午からよ。午は空いてるけど」
「そうか。……は朝からえ込むらしいな。気予報じゃ、午からになるって言ってた」
「ええ、そうみたいね。原付でくのは危ないから、カッパを着て軽自でこうとってるの」