"私の命を八千万円にした夫の末路" 第9話
「レナ!!」
が、切り声をあげて鳴りつけた。
空気が、瞬で氷点に凍りついた。 修の顔から、完全に血の気が引いている。
は鬼のような形相でレナを睨みつけ、それから恐る恐る、私の顔を盗み見た。
私は――。 急須から湯呑みにお茶を注ぎながら、何も聞こえていないかのように、穏やかに微笑んでみせた。
「レナさん、お茶淹れましたよ」
「……あ、ありがとう」
レナは私の平然とした態度に毒気を抜かれたのか、居悪そうに腰をろした。
が、ゴクリと唾をみ込む。
「……真由さん、今の話はね、その……」
「わかってますよ、お義母さん。自営業って、おのやり繰りが変なんですよね。私のパート代も、しでもお役にてていればいいんですけど」
私のその言葉に、族が目に見えて胸を撫でろした。 愚かな嫁。 何もらない、使い勝のいい無能な女。 そう信じ込んで、堵している。
「そうね、真由さんは本当に来たお嫁さんだわ」
が、擦り寄るような声で言った。 そのの甲に、血管が青く浮きている。
「さあ、めないうちに召しがりましょう。真由さんはく準備しなきゃいけないんだから」
私は、自分の席についた。
だが、私ののでは、もうつの歯が回り始めていた。
この連は、枚岩ではない。 千百万円のの抵当。 レナの百万円のカードローン。
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修の会社の焦げ付き。
千万円の分けを巡って、すでに面で醜い争いが始まっているのだ。
崩すなら、ここだ。
◇
朝、修が「の運転をしておく」と言って、傘も差さずにの庫へ向かった。 は、箱根に持っていくという段ボール箱を玄関に用している。
のには、レナと私だけが残された。
レナは洗面所で、朝のシャワーを浴びている。 脱所からは、激しいシャワーの音が漏れていた。
今だ。
私はエプロンをし、静かに脱所のへと向かった。
には、昨夜、斎で見つけたの「配分メモ」を、私がわざとき換えて偽造した枚のメモ用。
跡は、の角張った癖字を完璧に真似てある。
『配分・確定案』 『返済:3800万』 『修・会社設および再婚費用:3500万』 『予備・解体:700万』 『※レナへの分配は切なし。自己破産させること』
これを、脱所の洗濯のフタのに、まるでがポケットから落としたかのように、無造作に滑り込ませた。
さらに、その横に、昨夜撮したレナの「井友カード最終催告」のコピーを添えておく。
レナという女の性格は、嫌というほどっている。 極度の自己、欲、そして被害妄。 族ので自分が番されていると信じ、のためなら親でも兄でも平気で売りばす。
自分の取り分がゼロにされ、自己破産させられるとったら、どうくか。
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シャワーの音が止まった。
私は音を忍ばせ、玄関へと戻った。
◇
数分。
「……何よ、これ」
脱所から、をうようない声が響いてきた。
バタンッ!
激しい音をてて脱所の引き戸がき、髪を濡らしたままのレナがびしてきた。 そのには、私が置いたメモが握りしめられている。
「ママ!! ちょっと、これどういうことよ!!」
リビングで段ボールを縛っていたが、驚いて顔をげた。
「な、何よレナ、いきなり声をあげて」
「とぼけないでよ! これ、ママの字でしょ!? 『レナへの分配は切なし、自己破産させること』って、どういうつもり!?」
がメモをひったくり、目を丸くした。
「な、何これ!? 私、こんなのいてないわよ!」
「嘘落きしないでよ! ママの字じゃない! 兄ちゃんの会社と再婚費用には千百万もすくせに、私には円もくれないわけ!? 私を見捨てる気なの!?」
「落ち着きなさい、レナ! 誰がこんなものを……」
「あんたたちでしょ! 最初から私を騙して、汚れ仕事だけ押し付ける気だったんでしょ! あのボロの名義変更の類、役所から取ってきたの私よ!? 保険会社に問いわせの話入れたの、私のスマホからよ!? 私が警察に全部喋ったら、あんたたち全員豚箱きなんだからね!!」
レナのから、次々と決定な言葉が吐きされた。
役所での名義変更。 保険会社への問いわせ。
警察、豚箱。
玄関の靴箱ので、私はスマホの録音アプリを起させていた。