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"私の命を八千万円にした夫の末路" 第12話

欲望と恐怖で完全に発狂したの獣が、狭い庫の崩れ込んでくる。

だが、その阿叫喚を切り裂いたのは、くから微かに、しかし確実にづいてくる甲子音だった。

ウゥゥゥゥ――ッ! カンカンカンカン……!

サイレンのなり。 台ではない。 台、台の緊急両が、の狭いを、凄まじいスピードでこちらへ向かってり込んでくる。

庫のが、瞬にして凍りついた。

「……な、何の音?」 が首を竦め、怯えたようにを見やる。

「パトカーよ」

私は淡々と、の匂いを吸い込みながら言った。

「さっき言ったでしょう。 通話は最初から繋がってたの。 通報内容は『殺予備』および『自損壊による保険詐欺未遂』。 あなたたちがここで喚き散らした醜い言い争いも、全部、向こうのスピーカーに筒抜けよ」

「う、嘘よ……嘘でしょ!?」 レナがへたり込み、濡れた面に尻餅をついた。

「修! 何とか言いなさい! あんた、佐伯の跡取りでしょ!?」 が息子の肩を掴んで激しく揺さぶる。 だが、修は焦点のわない目でを見つめたまま、ただカタカタと歯の根を鳴らすことしかできなかった。

パトカーの赤い回転灯のが、りの幕を裂いて、庫の壁面を真っ赤に染めげた。

急ブレーキの摩擦音。 バタバタとドアがく音。 複数のいブーツが、たまりを蹴てて庫へと崩れ込んでくる。

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「警察です! 全員、かないで!」

レインコートを着た捜査員たちが、斉に庫を制圧した。

「誰が通報者ですか!?」

「私です」

私はスニーカーで面のタイヤレバーを警官の元へ蹴りし、ポケットからボイスレコーダーと、ジップロックに入った保険証券を差しした。

「夫の佐伯修、義母の、義妹のレナの名です。 私の乗る軽自のブレーキ油圧ホースを故に損壊し、私にさせて事故を装い、千万円の搭乗者傷害保険を詐取しようと共謀しました。 ここにすべての音声記録、部品の購入履歴、となる借の督促状のデータがあります」

流れるような、切のを交えない告発。

捜査員のがレコーダーの音声を確認し、別の刑事がタイヤハウスの奥をライトで照らし、即座に表を険しくした。

「……ホースがヤスリで削られ、針が巻いてある。フルードも漏れしてるな。鑑識を呼べ!」

その声が、佐伯の終わりを告げる決定打となった。

「嫌ぁぁぁっ! しなさいよ! 私は何もしてない! 全部ママと兄ちゃんが仕組んだことよ!」 レナが警官の腕ので暴れ狂い、ね散らかす。

「真由さん! あんた、恩を仇で返す気!? 誰のおかげでこのに置いてやってもらえたとってんのよ! この疫病神! 棒猫!」 が鬼婆のような形相で唾をばしながら私を指差すが、屈な女性警官に両腕を固められ、無様にねじ伏せられた。

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たい錠が、の乾いた首に噛み付く。

カチャリ、と。 今朝、私のでサンバイザーが折れたと同じ、乾いたプラスチックのような終焉の音がした。

だけは、錠をかけられる瞬も抵抗しなかった。 ただ、連される際、に打たれながら私を振り返り、掠れた声で願するように呟いた。

「……真由。嘘だろ……? 俺たち、夫婦じゃないか……」

私は、彼の目を真っ直ぐに見つめ返した。

その瞳のに、かつてした面は微も残っていなかった。 ただの、幸を糧にきようとした、卑な犯罪者の抜け殻。

「さようなら、修さん」

私は静かに言った。

「あなたが私に用してくれたあのり坂、今度はあなたたちで、転がり落ちていってね」

から、空気が抜けるような嗚咽が漏れた。 彼は警官に首根っこを掴まれ、へと引きずられていった。

台のパトカーのドアが閉まり、激しい赤灯の滅が、次第にざかっていく。

静寂が戻ってきた。

残されたのは、トタン根を叩くの音と、暗い庫のに佇む、私

私は自分の軽自に歩み寄った。

。 傷だらけで、褪せた体。 ボンネットにそっとのひらを置いた。

たい鉄の触。 だが、そのたさは、佐伯よりもずっと清らかで、正直だった。

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