"義父を八年看取った夜、手切れ金は三万円" 第6話
引きしを完全に引き抜き、畳のに置く。
そして、引きしが入っていた空洞の奥へ、私の赤くひび割れたを差し入れた。
奥の壁面。 指先が、の継ぎ目に触れた。
爪をて、横にスライドさせる。
カチッ。
さな、しかし確かな片のれる触があった。 い羽目板が枚、にれた。
その奥の漆黒の隙に、指先をさらにく滑り込ませる。
あった。
さな、たい属の触。
鍵穴だった。
私は掛けのポケットから、あの真鍮のさな鍵を取りした。
かりすら届かない仏壇の奥底。 探りだけで、鍵の先端を鍵穴に差し込む。
サイズは、完璧に致した。
息を止め、へ回す。
カチャリ――。
な、何もの真鍮の歯が噛みうような、厳かな音が仏に響いた。
仏壇の台座の底面が、わずかにセンチほど、へとせりしてきた。
隠し引きし。
私は両でその引きしを、ゆっくりと引きした。
に入っていたのは――。
油で厳に何にも巻かれ、太い麻紐で縛られた、ずっしりといつの包みだった。
麻紐を解き、油をめくる。
現れたのは、つのものだった。
つ目は、冊の古い預通帳。 表には、源造の力い自で『源造・裏座』と記されていた。
つ目は、昭付の、の全体の権利関係を記した『き台帳原本』と、公正証役の割印が鮮に押された通の封筒。
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その封筒の表には、震える跡ではなく、源造が倒れる直、公証役で作成させたことを証する、公証の厳格な活字が並んでいた。
『公正証遺言・正本』
そしてつ目。
それは、のひらに収まるほどの、分い冊の業務誌だった。
表をめくると、そこには、源造が倒れたあのから、声をせなくなる直までに記録された、修による『薬物投与の、量、そして瓶の薬品名』が、克に記されていた。
さらに、その記の最のページには、剥がされたばかりのしいポラロイド写真がクリップで留められていた。
写真には、病院のベッドで酸素マスクをつけられた源造の枕元で、識のない老の親指を無理やり掴み、の委任状に朱肉を押し付けている修の、醜く歪んだ笑顔が鮮に写っていた。
撮は、の。
私のので、その分い類の束が、く、確かな質量を持って震えていた。
「……お義父さん」
私の喉から、声にならない祈りが漏れた。
源造は、ボケてなどいなかった。 無力に殺されたわけでもなかった。
このは、、自分の排泄物を私に拭かせながら、この瞬を待っていたのだ。
自分がに、修たちが本性を現し、私を追いそうとする、まさにこの瞬を。
『あいつらに、円も渡してはならん』
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源造の声が、再び私の胸ので鳴のように轟いた。
隣の居では、まだ品な笑い声が続いている。
『乾杯だ! は厄介払いの記だ!』
私はたい笑みを浮かべた。
涙は、もう完全に乾いていた。
役者は揃った。 証拠も、武器も、すべて私ののにある。
修、子、健。 そして、に隠れている美子という女。
おたちがこれからわうのは、ただの婚でも、遺産争いでもない。
、おたちが踏み躙り、召使いとして嘲笑い続けてきた女のによる――。
慈の欠片もない、完全な処刑だ。
私は油を丁寧に包み直し、類の束を掛けの奥くに抱え込むと、静かにちがった。
計の針は、夜のを指していた。
復讐の夜が、静かに幕をけた。
真夜の台所は、蔵庫のく唸るコンプレッサーの音だけが支配していた。
居からは、すでにの男と女の醜い鼾が聞こえている。
ウイスキーのボトルを本空け、座卓のに典袋の残骸を散らかしたまま、修たちはのように眠りこけていた。
私は、息を殺して仏から抜けした。
のに握りしめた、油の包み。 そのにある『公正証遺言』のたい触が、肌着越しに私の脇腹を鋭く圧迫していた。
だが、これだけではりない。
遺言が通あったところで、あの酷で狡猾な男は、必ず「親父は認症だった」
「判断能力のない老にかせた無効な類だ」