"義父を八年看取った夜、手切れ金は三万円" 第10話
万円りません。……あなたのの靴のに、ちょうど同じみの封筒が入っているのを、さっき脱で見かけましたけれど?」
「ひっ……!」
健は両で自分の首を庇うようにして、畳のにへたり込んだ。
子が切り声をげた。
「健! あんた何やってんのよ! 親父の形見を質に入れて、典までネコババしたの!? 汚い男ね!」
「うるせえ! おだってのこと言えねえだろ!」
健が逆して叫び返した。
「親父のタンスから、母親の形見の着物をごっそり持ちして、ネットオークションに品の続きしてんのってんだぞ! 洗面所に落としていった買取り業者の査定細、俺が見てねえとでもってんのか!」
「なっ……! あんた、のバッグ勝にけたの!?」
醜い罵りいが、居に響き渡った。
互いの正を暴きて、顔を真っ赤にして掴みおうとする兄妹。
昨まで「族」の仮面を被り、私という共通の贄をいたぶることで結束していた連の絆など、最初からこの程度の舟だったのだ。
「見苦しい真似はやめろ!」
修の号が、をした。
修は額の汗をの甲で乱暴に拭い、ポケットからスマートフォンを取りした。
その瞳の奥には、もはや内への体裁すら捨てった、酷な獣のが宿っていた。
「……いいだろう、敏子。そこまでして居座る気なら、力づくで法に排除してやる」
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修の指が、慣れた様子で画面をタップした。
「警察か? 弁護士か? ……違うな。おのような精神に異常をきたしたを処理する、もっと確実な窓があるんだよ」
画面が繋がり、修は話に向かって、沈痛で、今にも泣き崩れそうな「劇の男」の声を響かせた。
「……あ、もしもし。域包括支援センターの福祉課の方でしょうか。はい、です。……実は、父の介護をてくれていた妻のことで、緊急のご相談がありまして……。
ええ、今朝から様子が完全におかしいのです。父の遺品を抱え込んで暴れ回り、親族に包丁を突きつけて脅迫してきまして……。
の過酷な介護活で、度の精神錯乱状態、いわゆる介護うつによる急性精神変調を起こしているようなのです。自傷害の恐れがあります。至急、精神科の専医と、措置入院の搬送チームを配していただけないでしょうか……!」
私の全の毛穴が、逆った。
この男は、私を「精神異常者」に仕てげ、救急で精神病棟の閉鎖病棟へ制連させる気なのだ。
度そこに放り込まれれば、退職の分与はおろか、財産権の主張など切できなくなる。
成見に修が就任すれば、私のは完全に法に抹殺される。
「……悪魔」
私の唇から、微かな呟きが漏れた。
話を切った修は、スマートフォンをポケットに戻すと、酷な勝利の笑みを浮かべた。
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「あと分もすれば、医療保護入院の搬送が来る。を縛られて、鉄格子の病棟でを過ごすんだな。おのような無能な女には、それが番お似いの終の処だ」
修はそう吐き捨てると、台所の隅にある配盤へ歩み寄り――。
バチンッ!
主幹ブレーカーを、力任せに引きげた。
を包んでいた蔵庫の唸り音が止まり、暗い部の蛍灯がすべて消えた。
さらに修は、勝の元栓へと向かい、のハンドルを固く締めげた。
「気もも、こののインフラはすべて俺が契約者だ。おに使う滴のも、ワットの気もない。……しく、迎えのを待つんだな」
暗の、修と子、健のが、勝ち誇ったように私を取り囲んだ。
だが。
私ののにあった恐怖は、すでに完全に蒸発していた。
私は静かに、胸元にを当てた。
そこには、源造が残してくれた、もうつの遺産――。
、修が源造に毒を盛った夜の、薬物の詳細が記された記。 そして、修の裏座の通帳。
「修さん」
私は、暗ので静かにをいた。
「つだけ、聞いていいかしら」
「あ? 命乞いなら聞かんぞ」
「美子さんと、その歳になる息子さんは……今、このに来る予定だったのかしら?」
修の体が、ピクリと直した。
目に見えて、男の呼吸が止まったのが分かった。
「……お、今……何と言った?」
「美子さん。、このを急に辞めた、あのパートの女性。