"義父を八年看取った夜、手切れ金は三万円" 第12話
「おい、待て! 何の真似だ!」
修が、狂ったように叫びながらに転がりてきた。
「このは、昨んだ親父のだ! 俺は男だぞ! 法廷相続である俺が、親父の遺品を処分して何が悪い! その女は、子供も産めずに寄していたただの嫁だ! 相続権なんて最初からありはしないんだ!」
修の号に対し、桐原弁護士は静かに縁の鏡を押しげた。
その瞳の奥には、ゴミを見るかのような徹なが宿っていた。
「修氏ですね。……相変わらず、傲でおめでたい方だ。ご尊父・源造様が、ご自の命と引き換えに、あなたという怪物を社会に抹殺するための罠を仕掛けていたことにも、まだお気づきにならないとは」
「……は? 罠……?」
「源造先は、、ご自が倒れられた直――まだ指先がかろうじてき、識が清であった最の週のに、私を密かに病へ召喚されました」
桐原弁護士は、類鞄から通の公正証を取りした。
表には、横浜公証役の公印と、源造の確かな実印が押されていた。
「これより、源造遺言公正証の、緊急検認をいます」
桐原弁護士の声が、のえ切った玄関に、刃のように鋭く響き渡った。
「居へがらせていただきます。……そこにいる、健氏、子氏も同席しなさい。逃を図った、即座に警察へ柄拘束を請します」
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執官がの私警官を連れてに踏み込んできたのを見て、健と子は声すらせず、居の壁際に震えながら座り込んだ。
した居の暗がりの、桐原弁護士は座卓の央に、携帯用のLEDデスクライトを置いた。
青いが、の絶望な顔を照らしす。
「読みげます」
桐原弁護士は、封筒から取りした面をいた。
『遺言公正証』
「第条。遺言者・源造は、その所する以の、建物、預貯、ならびにすべての産を含む全財産を、男の妻・敏子に包括遺贈する」
ドサリ、と音がした。
子が、正座を崩して畳のに倒れ込んだ。
「ほ……包括遺贈……? 全部……? 嘘でしょ……あたしたち子供よ!? 血の繋がった子供なのよ!?」
「第条」
桐原弁護士は、子の切り声を完全に無して続けた。
「遺言者は、男・修、次男・健、女・子の名に対し、民法第百条の規定に基づき、推定相続の廃除を請求する」
「は……廃除……!?」
修の顎がれたようにき、喉からヒューヒューと音が鳴った。
廃除。 虐待やな侮辱、著しい非があった相続から、法律守られているはずの『遺留分』すらも完全に剥奪する、民法最もい断罪続き。
「ふ、ふざけるなッ!」
修が座卓に両を叩きつけた。
「親父を虐待したことなんかない! 俺は毎、親父の治療費と介護費を仕送りしていた! このを維持してきたのは俺のだ! ボケた老に吹き込んでかせた無効な遺言だ! そんなものが法廷で通るか!」
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「ボケた老、ですか」
私は、静かに割烹着のポケットにを入れた。
そして。 昨夜、仏壇の隠し引きしから取りした『源造の業務誌』と、ポータブルカセットプレーヤーを、LEDライトの照らす座卓のに置いた。
カチリ。
無質な音が、居に響く。
「修さん。お義父さんはね、度もボケてなどいらっしゃいませんでした」
私の声に、修の眉毛がピクリとねがった。
「あなたたちが、毎、お義父さんの恩座から万円ずつ引きし、武蔵野の美子さんのマンションのローンに充てていたことも。
あなたがたまに実に来ては、お義父さんの元で『くね、おがねば退職とわせて億のがに入る』と囁いていたことも。
お義父さんは、すべて……こので聞き、すべて、このノートにの親指だけで記録されていました」
私は、誌の最のページをいて突きつけた。
そこには、識のない源造の親指を無理やり朱肉に押し付けていた、の修の笑顔の写真。
「そして、これをお聞きなさい」
私は、プレーヤーの再ボタンを押した。
ジジ……ッというノイズの、スピーカーから、あの掠れた、しかし確かな殺を帯びた源造の肉声が流れした。
『……しゅういち……。
おまえが……まえ……わしにませた、あの薬……。