"じいちゃんの遺言" 第3話
しかも、何度も洗濯を繰り返したのか褪せ、所々すり切れて穴がいている。
毛布をかけ直そうと元を見て、俺は絶句した。 「……マジかよ」
靴も履かず、サイズがっていないボロボロのスニーカーを素で履いている。俺は慎にそのスニーカーを脱がせた。 現れたさなは、見ているこちらが痛くなるほど惨な状態だった。かかとは真っ赤に腫れがり、度の焼けで皮膚がひび割れ、し血が滲んでいる。
こんな格好で、体どこから歩いてきたんだ? 番い集落でも、ここから数キロはれている。の膝、子供にとっては腰まであるいをかき分け、あんなさな、傷だらけのでここまで歩いてきたというのか?
胸の奥が、チリチリと傷したように焼ける覚を覚えた。 もし、俺があのままコーヒーをんで寝ていたら。もし、ドアをけるのがあと数分遅かったら。 違いなく、この子たちはので命を落としていた。
しばらく毛布のから背をさすり、ストーブのを当てていると、毛布のでさなが微かにいた。
「う……あう……」 2がほぼ同に、い瞼をけた。 焦点のわないきな瞳が、ゆっくりと部を見回し、そして見らぬ男である俺の顔を捉えた。その瞳には、濃いと恐怖が宿っていた。
「気がついたか」
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俺ができるだけ相を驚かせないよう、い声をさないように識して優しく言うと、2はビクッと過剰なほど肩を震わせた。 緊張を解こうとし、俺は無識に軽く咳払いをした。
「んんっ」
――途端に、2の顔がさっと青ざめた。
「ヒッ……!!」 い、鳴のような息を呑む音。 2はすごい速さで毛布をね除け、フラフラの体のまま正座をし、に額を擦り付けるようにしてくをげたのだ。
「ごめんなちゃい! いい子にします! ごめんなちゃい! 許してください!」 「たたかないで……ごめんなちゃい……!」
その異常な怯えように、俺は息を呑み、そして血の気が引くいがした。 ただの挨拶ではない。の咳払いつで、反射に座をする子供。 これは、常に理尽に鳴られ、暴力を振るわれ、いつくばって許しを乞うことに「慣れきった」の反応だ。
いったい、誰がこんなさな子供に、こんな酷い傷を植え付けたんだ?
「おい、顔をげろ。ってねえ」 俺がし慌てて言うと、2は恐る恐る、親鳥の顔をうかがう雛鳥のように顔をげた。だが、その華奢な体はまだ刻みに震え続けていた。 「ごめんなちゃい。勝に入って……ごめんなちゃい。らないで、ください」 涙目で懇願するその声は、恐怖に完全に支配されていた。
「だから、ってねえよ。で倒れてたから、のに運んだだけだ」
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俺があえてぶっきらぼうに言うと、2はキョトンとして顔を見わせた。 「たすけて、くれたの……?」 片方の子がおずおずと尋ねる。 「当たりだろ。あんなので、見殺しにできるか」
俺がそう言うと、2のきな瞳に、じわりと粒の涙が浮かんだ。
「あったかい……」 妹らしき子が、ストーブの網の奥で揺れる赤いを見つめて、見るように呟いた。 「うん、あったかいね、りっちゃん」 「おう、つむちゃん」
2は、きていることを確かめうように頬をすり寄せ、互いのさな体のぬくもりをじっていた。 その姿はまるで、たいのに段ボール箱に捨てられ、互いの体温だけを頼りにき延びようとする子猫のようで。 俺の、く閉ざされていたはずの胸の奥を、く、く締めつけた。
「名、なんて言うんだ?」 俺がしゃがみ込み、目線をわせて聞くと、片方の子がしだけ背筋を伸ばして言った。 「わたし、紬(つむぎ)でしゅ。こっちは妹の、律(りつ)でしゅ」 「紬と律、か」 俺が名を呼ぶと、2はさなで俺の名を反芻するように見つめてきた。 「ちばちゃん……?」
そのだった。
グーーー……クルルゥゥ……。 緊張が解けたからだろう。盛な腹の虫の音が、2の腹から見事なステレオ放送で鳴り響いた。 静かな部に響き渡るその音に、2は顔を真っ赤にしてお腹を押さえた。 「あ、う……」 2は恥ずかしそうにを向き、またペコペコと謝り始めた。
「ごめんなちゃい、お腹鳴っちゃって……うるさくして、ごめんなちゃい……」