"じいちゃんの遺言" 第5話
俺がく言うと、2は目を丸くして、目ののカレーと俺の顔を交互に見た。 「べていいの? 本当に?」 まるででも見ているかのような、信じられないという顔つきだ。 「毒なんか入ってねえよ。めねえうちにえ」 俺はあえてぶっきらぼうに捨て台を吐き、自分の分のコーヒーを入れ直すふりをして、2に背を向けた。男に直されると、緊張して慮するとったからだ。
カチャッ。 スプーンが皿に当たる、かすかな音がした。 「「いただきましゅ!」」 フーフー、フーフー。 2のさな声がなる。いカレーに、何度も懸命に息を吹きかける音が聞こえてきた。 (猫舌か。まあ、子供だしな) ので苦笑しながら、俺はコーヒーカップを持つを止め、背でを澄ませていた。
パクリ、とべた音がして、瞬の静寂が流れた。 次の瞬、2の目がカッと見かれたのが、見なくても気配で分かった。
「はぁ〜〜……!!」 「ん〜〜!!」 言葉にならない、嘆の声ががる。 に入れた瞬、りんごと蜂蜜の優しい甘さがじんわりと広がり、その直にスパイスの芳醇なりがを抜ける。そして、じっくり煮込まれた豚バラ肉が、舌のでほろりと崩れて溶けていく。
「と、とけた! お肉なくなっちゃった!」 「甘い! でも、ちょっとだけ辛い! おいちい!」
ハフハフといカレーをましながら、猛烈な勢いでスプーンをかす音が響き始めた。
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カチャカチャと皿とスプーンがぶつかる音が、まるで楽器の演奏のように部にこだまする。 俺はしして、コーヒーをむふりをしながら、肩越しに2の様子を盗み見た。
そこには、俺の予を遥かに超える、衝撃な景があった。
2は、涙とで顔をぐちゃぐちゃにしながら、必に、まるで何かに取り憑かれたようにカレーをに運んでいたのだ。 「おいちい……おいちいよぉ……! あったかい……おいちい……!」 いカレーを儀悪く頬張り、子のでをバタバタさせて全でびを表現している。だが、その目からは、止めどなく粒の涙が溢れしていた。 それはただ空腹が満たされたからだけではない。極限の寒さと恐怖から解放され、温かいべ物が胃の腑に落ちていくことへの、本能からの涙だった。
「おいおい、そんなに慌ててうな。喉詰まらせるぞ」 俺は苦笑交じりに注し、の入ったコップをそれぞれの元にづけた。 「ごっくん!」 紬はコップのを気にみ干し、目を真っ赤にして俺を見げた。
「ちばちゃん、これ、魔法でしゅか?」 「は?」 「こんなに美しいカレー、ね、初めてべた……!」 紬がしたように言うと、隣の律もの周りをカレーだらけにしながらきく頷いた。 「ママのご飯より、美しいかも……!」
紬がそう無邪気に言いかけた瞬。
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彼女はハッとしたように、自らのを両でく押さえた。 そして、急に顔を曇らせ、ポロポロときな涙をこぼし始めたのだ。
「ごめんなちゃい、ママ……ごめんなちゃい……! 私たちだけ、美しいのべて……ごめんなちゃい……!」 2はピタリとべるを止め、スプーンを置き、い罪悪に押しつぶされそうに泣きした。
「どういうことだ?」 俺がい声で聞くと、紬がしゃくりげながら、震える声で答えた。 「ママ、ご飯べてないの……。私たちに、残ったご飯くれて……ママは、おだけ……」 律も泣きながら続ける。 「ママ、病気でけなくて……だから私たち、助け呼ばなきゃって……のおから、来たの……!」
途切れ途切れの幼い言葉から、壮絶な背景が浮かびがってきた。 母親が病気か過労で倒れ、料も尽きかけ、母は自分の事を絶って、子供たちにだけべさせていたのだ。 そして、けなくなりたくなっていく母を救うため、この幼い2が、猛吹のを越えて、助けを求めに来たのだ。
「マジかよ……」 俺は言葉を失い、を殴られたような衝撃を受けた。 この猛吹のを。でも遭難しかねない、界ゼロのいを、4歳の子供のだけで歩いてきたというのか。 母親を助けたいという、ただそのだけで。
胸の奥底にあった、信という名の氷のようなしこりが、気に崩れ落ち、溶けていく音がした。
俺はなんてちっぽけで、つまらないを張っていたんだ。