"じいちゃんの遺言" 第6話
俺は、込みげるを抑え、努めて平坦で力い声で言った。 「全部え。おかわりもある」 「でも……ママが……!」 「ママの分もある! 鍋いっぱいあるんだ!」 わず声をしてしまった。2がビクッと肩を震わせる。
俺はきく呼吸をして、2のに膝をつき、真っ直ぐに目線をわせた。 「いいか、よく聞け」 俺のきなで、2のさな肩を包み込むように置いた。その体はまだ刻みに震え、え切っている。 「おらが元気にならなきゃ、ママを助けにけねえだろ」 俺の言葉に、2がハッと顔をげた。涙で濡れたきな瞳が、俺を見つめる。 「まずはえ。って温まって、力をつけろ。そしたら……俺がママを助けにってやる」 「……本当? ママ、助けてくれるの……?」 「ああ、約束する。絶対に助ける。だから今は泣き止んで、え」
そう力く言い切ると、2は顔を見わせ、そして堰を切ったように俺の胸にび込んできた。
「うわああぁぁん!」 「ママぁぁ……!」 2は俺の首にしがみつき、声をげて泣きした。さなが、俺のフリースをギュッと力く掴む。と涙が、俺の胸元をぐっしょりと濡らしていく。
「よしよし。怖かったな。偉かったぞ。よく頑張った」 俺は器用に、2のさな背を何度も撫でた。
その俺のには、かつて部たちを守りたかったのに守れなかった、無力と悔の記憶が刻まれている。
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信になり、都会からに逃げ込み、自分の殻に閉じこもっていた俺。もう誰もさない。誰も信じない。そう自分に言い聞かせて、孤独を選んだはずだった。 だが今は、このさな命の温もりが、確かなみとして俺の腕のにある。 俺のを掴む、この幼い指の力さが、俺の凍えきったを完全に溶かしていく。
(あったけえな……) ストーブのじゃない。が本来持っている、魂の温度だ。 「でぐしょぐしょじゃねえか」 ので悪態をつきながらも、俺は2を抱きしめる腕に、さらに力を込めた。 胸ので、2のさな臓がトクトク、トクトクと脈打っているのが伝わってくる。その命のリズムは、まるで俺の止まっていたを再びかす、計の秒針の音のようだった。
「よし、待ってろ」 俺はちがり、押し入れの奥からスキーウェアと、かんじき、のグローブなど、の装備を引っ張りした。 「ちばちゃん、どこくの?」 そうに見げる2に目線をわせて、く言い聞かせる。 「ママを迎えにく。だが、おらはここで待ってろ」 「いや! 私もく! つむもく! ママのとこく!」 2が泣き叫びながら、俺のにしがみつく。その必な力さに、母をう覚悟のほどが伝わってくる。
だが、はこの吹だ。の俺でも命がけになる。連れてけば確実にまといになり、最悪の、全員が遭難する。
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「ダメだ。は嵐だ。おらが倒れたら、誰がママを元気づけるんだ? 俺1ならっていける。その方がい。わかるな?」 真剣な顔で諭すように言うと、2は唇をギュッと噛み締め、泣くのを必にしてコクリと頷いた。 「……分かった。待ってる。ママを、絶対連れてきてね」 「ああ、約束だ。男の約束だ」
2のをくしゃりと撫で、力な懐灯とかき用のスコップをに取った。 「ってくる。鍵は内側からしっかり閉めとけよ」 そう言い残し、俺は引き戸をけ、猛吹のへとびした。
は、獄のような嵐だった。 の唸り声でが痛い。ヘッドライトのがに乱反射し、界はゼロにい。 子供たちの跡など、とっくににかき消されている。だが、俺には確信があった。 のい子供が、このさで1歩ける距。それなら、この裏の麓にある、使われなくなった古びた林業用の作業の辺りしかない。
「ハァ……! ハァ……!」 かんじきを履いたでをかき分け、なきをむ。 がナイフのように頬の皮膚を切り裂き、まつ毛が凍りつく。だが、議と辛くはなかった。 (あいつらが、あんなさな体で、泣きながらここを通ったのか……) そううだけで、体の奥底から得体のれない力が湧いてくる。
30分ほど歩き続けた頃だろうか。 の音に混じって、ギシギシと何かが軋む嫌な音が聞こえた。
ライトを向けると、のみとで半壊した古いが見えた。