"3ヶ月開けなかった白い封筒と流産した妻" 第2話
だが、今だけは理解したくなかった。
彼女はデスクのの封筒を指差した。
「読んで」
啓介はちらりと見ただけで、を伸ばそうとはしなかった。
彼は腕計に目をやり、たく告げた。
「今夜で話そう。これから事な会議がある」
その言葉に、桜は静かに目を閉じた。
先週もそうだった。
病院から帰ってきた、震えるで話をかけた、啓介は会議だと言って切った。
その夜、12過ぎに帰宅した彼はソファで眠ってしまった桜を起こしもしなかった。
翌朝には、シンガポール張へと旅っていた。
3に帰ってきた彼は、ベッドサイドに置かれた薬袋を見ても何も尋ねなかった。
桜が自分から言わないのなら、それはではないことなのだと。
彼はいつもそうっていたからだ。
桜は目をけ、はっきりと告げた。
「今夜、私はにいないから」
啓介は神経質そうに笑った。
「実に帰るのか。ホテルか。違うなら、どこにくんだよ」
桜は肩にかけたバッグのストラップをく握り直した。
「それをどうしてあなたに教える必があるの」
啓介の顔から笑みが完全に消えた。
桜はドアをける、最に振り返った。
彼女の線が、デスクのの封筒を捉える。
「それと、もし今夜もこの封筒をけなかったら、あなたはきっと悔することになる」
啓介はその言葉を、単なる脅しだと受け取った。
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だから、最まで彼女を引き止めなかった。
エレベーターのドアが閉まった、桜はようやくい息を吐いた。
のひらには、爪がい込んだ跡がくっきりと残っている。
涙はなかった。
むしろ奇妙なほど、は冴え渡っていた。
駐へと向かいながら、彼女はスマートフォンを取りした。
画面をき、保していたリストを1つずつ確認していく。
の共同名義座の理。
公類の続き。
携帯話番号の解約続き。
仮まいの契約。
そして、弁護士への類送付。
ほとんどの準備は、とうの昔に終わっていた。
今の来事が、この突然の決断を押ししたわけではない。
桜はずっとから、ここをる準備をしていたのだ。
ただ、最の最で臆病に吹かれて、引き返してしまうのではないか。
それだけを恐れていた。
だから今会社に来たのも、ただ婚届を突きつけるためだけではなかった。
バッグの1番奥には、あの病院で受け取ったもう1つのさな薬袋が入っていた。
に乗り込むとすぐに、彼女はその袋を取りした。
処方箋がかれたには、自分の名がはっきりと印刷されている。
桜はしばらくそれを見つめた、再びバッグの奥にしまった。
助席には、数週に作成した企業再建に関する報告のコピーが置かれている。
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名グループが経営危を乗り越えた、啓介の名で役員会に提された戦略案だった。
実際の案を作ったのは桜だ。
当、啓介は夜3に話をかけてきてこう言った。
「今回だけ助けてくれ。会社が定したら、俺たちも昔みたいにやり直そう」
桜はその言葉を信じた。
そのために眠を削り、病院の予約を先延ばしにした。
そして、最も切なものを失った。
それなのに今、会で啓介は別の女の背を擦っていた。
自分に向かって、になるなと言い放ったのだ。
港区のタワーマンションに帰宅した桜は、ったよりもない荷物をまとめた。
きなスーツケースが2つあれば分だった。
結婚に買ったブランド品のバッグや宝飾品のほとんどは、そのまま置いていく。
啓介ので買ったものを、しいに持ち込みたいとはわなかった。
代わりに、本棚から学代のノートや母が残したアルバムを取りした。
古いノートパソコンも緒にケースに収める。
クローゼットの奥には、結婚に就職活で着ていた紺のスーツがあった。
古臭くて流遅れのだったが、桜はそれもスーツケースに詰めた。
を畳んでいたがふと止まる。
ベッドの向かいにあるチェストのに、さな箱が1つ置かれていた。
数ヶ、彼女がこっそり買っておいた赤ちゃんの靴だった。
とてもさくて、真っな靴。