"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第8話
私は淡々と答えた。
「それは幸さんの担当です」
私の声は自分でも驚くほど静かで、平坦だった。
義母はまくしてる。
「幸が忘れたんだから、あなたがやればいいでしょう! 本当に気の利かないね!」
私はもう痛くも痒くもない。
「私はやりません。そのままにしておいてください」
私が無表のままたく言い放つと、義母は瞬言葉に詰まった。
これまでの私なら、ここで目を伏せて黙り込んでいたはずだ。
しかし今の私は、義母の目を真っ直ぐに見据えたまま微だにしなかった。
義母は気さをじたのか、それ以何も言わずに顔を背けた。
私はキッチンに戻り、スマートフォンでもう度先ほど撮した写真を確認した。
画面のでる『32,000,000円』という数字、そして『自宅の売却査定』という文字。
私はコンサルタントの名刺にかれていた、担当者の名に目を留めた。
その名字には、私にとって見覚えがあった。
夫の携帯話の画面で、夜遅くによく表示されていた名と同じだったのだ。
私はスマートフォンの画面を消し、胸のポケットにしまった。
夫の嘘は、おの問題だけではないのかもしれない。
そのの夕方、帰宅した夫が卓のに見るものは、まだほんの序章に過ぎない。
計の針が午を回った。
のは気なほど静まり返っている。
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キッチンの隅に放置されたつの燃ゴミの袋から、微かに嫌な匂いが漂い始めていた。
義母は自分の部に引きこもったまま、昼のになってもてこない。
これまでは、私が必ず声をかけ、お盆に事を乗せて運んでいた。
私が折れて嫌を取りに来るのを待っているのだろう。
しかし私は、歩もかなかった。
私は自分のためだけに、簡単なうどんを作ってべた。
の器を洗いながら、台所の窓のを見つめる。
空はいに覆われ、今にもたいがりしそうだった。
胸のポケットに入れたスマートフォンのみを、私は何度も確認した。
あのに保された千百万円という数字。
そして、私のらないところでめられているこのの売却査定。
それらが、私のにたく盾を作りげていた。
午。
ついに空腹に耐えかねたのか、義母が階からりてきた。
スリッパの音をわざときく鳴らし、リビングのドアを乱暴にける。
義母の線はまず卓のの分担表に向かい、次には私を睨みつけた。
義母は腕を組み、私を見ろすように言った。
「お昼ご飯、まだなんですけど」
私は読みかけていた本から顔をげず、静かに答えた。
「蔵庫に納豆と卵があります」
義母は信じられないというように、きく息を吸い込んだ。
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「嫁がにいるのに、姑に自分でご飯を作れっていうの!」
私は淡々と事実だけを伝えた。
「私は今お休みをいただいています。そして、お義母さんの昼は私の担当ではありません」
義母は顔を真っ赤にして鳴った。
「本当にげのない女ね! 幸が帰ってきたら全部言いつけてやるから!」
義母は台所へき、蔵庫のドアを力任せに閉めると、卵を個だけ持って部へ戻ってった。
鳴り声が消えたリビングで、私は再び本に目を落とした。
しかし文字は全くに入ってこない。
、私は族のために尽くしてきた。
正社員として働きながら事の全てを背負い、義母の嫌みに耐え続けてきた。
それはいつか、彼らが私の苦労を分かってくれると信じていたからだ。
しかし現実は、千百万円もの現を隠し持ちながら、私を無料の労働力として使い潰すだけの関係だった。
午。
玄関のドアが乱暴にく音がした。
夫が帰ってきたのだ。
音が玄関でピタリと止まった。
夫が鳴り声をげた。
「おい、美!」
リビングのドアが荒々しくかれ、夫が鳴り込んできた。
その顔はらかな苛ちで歪んでいる。
「どうしてゴミがてないんだよ! 玄関まで匂ってるじゃないか!」
私はソファからちがり、静かに答えた。
「今は曜です。
あなたの担当のですから」
夫は声を荒げながら、ネクタイを乱暴に引き抜いた。
「俺は朝がなかったんだよ。