"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第16話
キッチンの隅にある燃ゴミの袋は昨からさらにつ増え、計つになっている。
とはいえの効いた内で放置されたゴミから、はっきりと嫌な匂いが漂う。
テーブルには夫と義母が昨夜べたであろうコンビニ弁当の空き箱や、汚れた箸が散乱している。
私が何もしなくなったことで、このの当たりはたった数で音をてて崩れっていた。
義母が嫌極まりない顔でリビングに入ってきた。
義母はゴミ袋を指差し、私に向かって鳴った。
「ちょっと、この臭いどうにかしなさいよ! 玄関まで匂ってるじゃないの!」
私は自分のためのトーストを静かに皿に乗せながら、たく答えた。
「ゴミしは幸さんの担当です。私は自分の担当以のことはしません」
義母は顔を真っ赤にして団駄を踏んだ。
「屁理屈ばかり言って! 嫁のくせにのことを何もしないなんて異常よ!」
私が静かに問い返した。
「異常なのは、千百万円も隠し持ちながら、私に活費を全て払わせていたことではありませんか」
義母は言葉に詰まり、線を泳がせた。
おの話をされると、義母は途端に気になる。
自分がついてきた嘘のろめたさがそこにあるからだ。
そこに、目のに濃いクマを作った夫がりてきた。
昨夜は吉川との話でもできなかったのだろう。
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夫はゴミの匂いに顔をしかめたが、私に文句を言う気力もないようだった。
義母が夫に当たり散らす。
「幸、あんたゴミくらいしなさいよ! 美さんが何もしないんだから!」
しかし、夫はうるさそうに舌打ちをした。
「朝からギャーギャー騒ぐな! 俺だって今それどころじゃないんだよ!」
夫の鳴り声に、義母はビクッと肩をすくめた。
いつもなら私がに入り、そのを丸く収めていたはずの朝の景。
しかし私はの言い争いを完全に無し、自分のトーストを静かにべ終えた。
器を洗い、コートを羽織る。
誰にも返事を求めないその言葉を残し、私はをた。
「ってきます」
背で夫と義母の言い争う声がさらにきくなるのが聞こえた。
会社へ向かうので、私はこれまでのを振り返っていた。
なぜ私はあそこまで耐えてきたのだろうか。
それは娘のためだった。
に結婚してをた娘に、両親の仲な姿を見せたくなかったのだ。
そしてもうつは、私自が築きげてきたこのという居所を、に任せて放したくなかったからだ。
私がりに任せてをびしていれば、夫と義母はんでこのを乗っ取っていただろう。
だから私は、完璧な証拠が揃うまでじっと耐えてきたのだ。
夕方、仕事を終えて帰宅すると、のの状況はさらに悪化していた。
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リビングのテーブルには昼に義母がべたの器がそのまま置かれている。
流し台の汚れは限界に達し、ゴミの匂いはリビング全体に染みついていた。
私が毎どれほどの労力を使ってこのを清潔に保っていたか。
その見えない労働の価値が、今最悪の形で証されていた。
ソファには疲れ果てた様子の夫が座っていた。
義母の姿はない。
夫は私が帰ってきたことに気づくと、いをいた。
「美、ちょっと話がある」
夫の声にはいつものような覇気はなかった。
どこか焦燥に駆られ、追い詰められたの響きがあった。
私はコートを着たまま、夫からしれた子に座った。
「何ですか?」
夫は両で顔を覆い、くため息をついた。
「母さんがパニックになってるんだ。おがに話したせいで座が凍結されたって」
私が淡々と答えた。
「そうですね。詐欺の能性があるとお伝えしたので、当然の処置です」
夫は顔をげ、すがるような目で私を見た。
「頼む、美。に話して誤解だったと伝えてくれないか。あのおがないと母さんが困るんだ」
夫はまだ、吉川のを隠し通せるとっている。
私のはっきりとした言葉が、夫を突き刺した。
「義母の入居資ですか? それとも吉川さんとのマンション購入ですか?」
その言葉に、夫はに打たれたように固まった。
目をきく見き、が魚のようにパクパクといている。