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"3200万円を隠した姑と「養ってやる」の夫" 第26話

親族会議の翌朝。

私がいつも通りに階へりると、リビングは異様な静けさに包まれていた。

キッチンの隅で悪臭を放っていたつのゴミ袋は消えていた。

夫が朝に、自分のでゴミ捨てまで運んだのだろう。

しかしには、ゴミ袋から漏れた黒い汁の跡が点々と残され、拭き取られていなかった。

まで詰めが甘い。それが佐幸という男の限界だった。

私は雑巾を濡らし、その汚れを静かに拭き取った。

夫のためではない。

これからの私のを汚されたままにしておきたくなかったからだ。

階からは、音とダンボール箱を引きずる鈍い音が聞こえてきた。

夫が自分の荷物をまとめている音だ。

夫叔父からの「にはけ」という厳命に逆らう勇気は、夫には残っていなかった。

私はコーヒーを淹れ、静かに卓に座った。

しばらくして、目のに濃いクマを作った夫がりてきた。

には自分のマグカップを持っている。

夫はコーヒーメーカーにを伸ばしたが、ポットのはすでに空だった。

私が自分の分しか作らなかったからだ。

夫のが空のポットを持ったまま、空でピタリと止まった。

なら私がすぐにがり、「今しいのを淹れますね」といていたはずだ。

しかし私は自分のカップから温かいコーヒーをむだけで、夫の方を見ようともしなかった。

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夫は無言のままポットを置き、の蛇を捻ってたいを直接マグカップに注いだ。

そして私の向かい側の席に、逃げるように背を丸めて座った。

その、テーブルのに置かれていた夫のスマートフォンがけたたましく鳴り響いた。

画面に表示されたのは、見慣れた『吉川』の文字だ。

夫はビクッと肩を震わせ、私をちらりと見た。

私は線をわせず、ただ静かにコーヒーをみ続けていた。

夫は震える指で画面をタップし、スマートフォンをに当てた。

「もしもし」

夫の声はひどく掠れていた。

話の向こうから、吉川の甲い声が漏れ聞こえてきた。

「ちょっと! 今朝私のに弁護士から内容証が届いたんだけど!」

吉川の鳴り声は、静かなリビングに痛いほど響いた。

「慰謝料百万ってどういうことよ! 奥さん何も気づいてないって言ってたじゃない!」

夫は顔を青ざめさせ、必に声を潜めた。

「すまない、俺も予で……でも、必ず俺が何とかするから……」

吉川の声には、もはや司に対する甘えや敬は微もなかった。

「何とかするってどうやって! あなたも追いされるんでしょう?」

あるのは、づるを失った女の醜いりだけだ。

吉川はたく吐き捨てるように言った。

「お母さんの千万も凍結されたんでしょう。慰謝料なんて払えないじゃない」

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夫は必に縋る。

「頼む、し待ってくれ。俺の料から分割で……」

吉川はに言い放った。

「ふざけないで! 慰謝料の連帯保証なんて絶対に嫌だからね!」

酷な言葉が続く。

「マンション買ってくれるって言うから付きってあげてたのよ。のないおじさんなんて用はないわ」

夫は懇願した。

「待ってくれ吉川、俺にはもう君しか……」

ツーツーという無質な子音が、夫の言葉を無惨に断ち切った。

吉川は話を切ったのだ。

夫はスマートフォンをに当てたまま、のように固まった。

その刻みに震え始めている。

ポロリとスマートフォンがから滑り落ち、テーブルのに乾いた音をてて転がった。

夫の顔から全てのが抜け落ちていた。

妻を裏切り、を奪い、母親の財産にまでをつけてに入れようとしたしい

それは相の女からすれば、ただの「おという条件付きの遊び」に過ぎなかったのだ。

夫は両で顔を覆い、く絶望なため息を吐きした。

泣き叫ぶ気力すら、彼にはもう残っていなかった。

私はその姿をややかに見つめ、静かに席をった。

彼が何を失おうと、もう私のには何の波たない。

になると、義母もようやく自からてきた。

にはさなボストンバッグをつだけげている。

義母の顔は晩で歳も老け込んだように見えた。

は丸く曲がり、取りはおぼつかなく、フラフラとリビングに入ってきた。

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