"残高220円の介護嫁" 第9話
「なら払う! 今週にスケルトンにしないと、買い取りの決済がりねえんだよ!」
健の声には、先ほど以の狂気が混じっていた。
完全に理性を失っている。
都ファイナンスへの返済期か、それとも絵里奈に約束した級マンションの契約付の期か。
何かがこの男の喉元に刃を突きてているのだ。
ガリガリッ、と。
ドアの隙に、鉄のバールの先端がねじ込まれた。
蝶番が鳴をげ、塗装がパラパラと剥がれ落ちる。
私は息を呑んだ。
ここまで骨な暴力にるとはっていなかった。
昼がりの宅、オートロックもない築古マンションの階。
隣所のは齢者ばかりで、物音がしても誰も部からてこない。
「けろ、美奈子!」
健がドアノブをガチャガチャと激しくさせながら鳴り散らした。
「居るのは分かってんだよ! 居留守を使って引き延ばす気か! てめえの着替えくらいは段ボール箱に詰めて廊にしてやるから、さっさと鍵をけろ!」
メリメリ、と属が歪む吉な音が響く。
築の鋼鉄製ドアは、の男が本気でバールをかませば、数分と持たずにこじけられる。
私はずさりした。
パニックになりそうな胸の鼓を、両でく押さえつける。
警察を呼ぶか?
〇番して、「義弟が暴れている」
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と通報すれば、警察官は来る。
だが、警察の民事介入は鉄則だ。
健が「ここは私の実で、母がくなり私が正当な相続です。法占拠者をち退かせようとしているだけです」と分証を見せて主張すれば、警察は「当事者同士で話しってください」と濁し、せいぜいそのを解散させるだけで終わる。
そして警察がった、より湿で決定な暴力が襲ってくるだけだ。
——その。
私のの裏に、コツリとい触が当たった。
に落ちていた、真鍮の鏧子(おりん)。
そして、先ほど私がスマホに保した、数分の写真。
『区役所のコンプライアンス推課に、この写真を今すぐ送信したら』
そうだ。
この男が恐れているのは、警察ではない。
『社会な』だ。
私はスマホを握りしめ、玄関の内側から、ドアポストの投函の鉄蓋をカパッと押しけた。
の埃っぽい空気と、健の吸うタバコのっぽいヤニの匂いが気に流れ込んでくる。
投函の隙から、にいる健の脚元に向けて、私は極限までやした声を放った。
「松本健係」
バールをかしていた作業着の男のきが、ピタリと止まった。
投函の向こうで、健の革靴がピクッと震える。
「……あ?」
「品川区役所・総務部コンプライアンス推課の直通話番号は、〇——****ですね」
健の息が詰まる音が、鉄の板越しにはっきりと聞こえた。
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「私のスマホは今、総務課の当番窓に発信できる状態になっています」
私は投函の隙から、スマホの画面をへ突きした。
画面には、区役所の代表番号と、先ほど撮した健の顔写真、そして『職員による親族宅への法侵入及び器物損壊の告発』と打ち込まれたきメールが、発信ボタンひとつの状態で表示されている。
「そして、もうひとつ」
私は呼吸をえ、最も鋭い刃を言葉に乗せた。
「反田の、株式会社都ファイナンス・債権回収管理部。担当の武田さんというお名が、納戸の類にありましたね」
投函の向こうで、健が「ヒッ」と喉の奥でい鳴をげた。
作業着の男たちが、顔を見わせる。
「おい、松本さん……都ファイナンスって、あの反田のヤクザ紛いの融か? あんた、あそこにぇしてんのかよ」
「ち、違う! 関係ない! こいつのデタラメだ!」
健の声が、激しくずっていた。
脂汗が顎から滴り落ちる気配すら伝わってくる。
「解体業者の方」
私は投函から、作業着の男たちに向かって静かに呼びかけた。
「この部は現、私はここで暮らしてきました。義母が残した類についても、弁護士に確認しています。もしドアを破壊して侵入した、あなた方も共同正犯として、品川警察署に建造物損壊の現犯で即座に柄を引き渡すことになります。
当数万円のために、科をつけるおつもりですか?」