"残高220円の介護嫁" 第12話
命乞いでもする気か?」
「あなたはこのマンションを売却して、千万円の現をに入れるつもりですね」
「当たりだろ! 駅の好だ! 築古でもの持ち分だけでその価値はある!」
「そして、そのおで、絵里奈さんとのタワーマンションを買う」
絵里奈がフンと顎をしゃくった。
「そうよ。健さんはエリートなの。こんな汚い部でを終えるじゃないのよ。あんたみたいな底辺がを挟むことじゃないわ」
「そうですか」
私はゆっくりと頷き、エプロンのポケットから、先ほどまで隠していた黄い類の控えを取りした。
そして、机のに置かれた『遺産分割協議』のに、ねるように置いた。
「では、絵里奈さん。あなたの好きな健さんの、本当の姿をお見せします」
「……は?」
絵里奈の眉がピクリとねた。
私は机のの黄いを、指先で絵里奈の目のへ滑らせた。
京都品川区反田丁目。
株式会社都ファイナンス・債権回収管理部。
『極度方式基本契約・残証』。
「な……にこれ?」
絵里奈が怪訝そうに眉をひそめ、そのを拾いげた。
そこに並んでいたのは、酷な活字の群れだった。
債務者:松本 静() 連帯保証:松本 健 現借入残:千百万円 約定返済額:毎百万円(元利均等) 担保権設定:第順位根抵当権(極度額千万円)
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絵里奈の目が、類のを激しく泳いだ。
「さ、千百万……? なにこれ? 健さん、これ何なの!?」
部の空気が、瞬にして凍りついた。
健の顔から、さっと血の気が引き、気へと変していく。
「な……っ! 美奈子、お、何を……!」
「反田のノンバンクです」
私は親族全員に聞こえるよう、はっきりとした声で言葉を紡いだ。
「健さんは、認症で判断能力のなかったお義母さんの実印を勝に持ちし、このを担保に入れて千万円の枠で借をねていました」
「な、なんだと!?」
浩司が叫び、絵里奈のから類をひったくった。
「おい兄貴! これ本当かよ!? 担保に入ってるって……じゃあこの、借のカタになってんのか!?」
恵子も血相を変えて類を覗き込む。
「嘘でしょう!? 千万円丸々に入るんじゃないの!? 千百万の借って……残りは半分以じゃない!」
「ち、違う! それは母さんの事業資で……!」
健が必に叫んだが、その声は完全に裏返っていた。
「事業資?」
私はたく微笑んだ。
「お義母さんは、寝たきりでしたよ。何の事業をするというのですか? 借の細を見ました。引きされたおのくは、座の級クラブの決済と、港区の輸入ディーラーへの振込、そして——」
私は絵里奈をまっすぐに見据えた。
「神崎絵里奈さん。あなたのにつけている、そのカルティエの計と、シャネルのバッグ。
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購入はの、本越ですね。領収の宛名は、都ファイナンスから健さんの個座に振り込まれた融資の直と、完全に致しています」
絵里奈が「息を呑む」というより、喉を詰まらせたような音をてて直した。
にしたブランドバッグを、無識にろへ隠そうとする。
「健さん……あなた……」
絵里奈の声が、りと恐怖で震え始めた。
「業医の娘と結婚するために、自分を港区の資産に見せかけようとして……借で私にプレゼントを買ってたの……?」
「ち、違う! 絵里奈、聞いてくれ! あれはな替で、このを売れば全部チャラになるんだ! 俺は公務員だぞ! 信用があるんだ!」
「信用?」
私は文机のの、もう通の茶封筒をに取った。
「その公務員の分も、まで持つかどうか分かりませんね」
「……な、何だと?」
健が怯えた目で私を見る。
封筒から引きしたのは、品川区役所のロゴが入った、枚の公文だった。
『職員の務規律違反に関する事聴取通』。
差は、品川区総務部コンプライアンス推課。
「曜の午に、私が提した告発状が受理されました」
私は静かに言った。
「区役所職員が、親族の介護者のを正に搾取していた疑惑。そして、庁内の共済組からの限度額を超える債務。さらに、民融業者からの執拗な督促が勤務先に及んでいる事実。
、午に総務部による査問委員会がかれます」