"義母ATM、全財産を失う" 第1話
法事は予定通りめて構いません。
私は、ニスと埃の匂いがち込める暗い廊で、倒れ込むように座り込んでいた妻の麻の肩を抱き寄せ、母に向かって静かにそう言いました。
声を荒らげることもしませんでした。 母を責める言葉も、そのでは切にしなかった。
元には、剥がされたばかりの古い壁の破片と、乾きかけの雑巾が無造作に散乱していました。
顔を蒼にした麻は、呼吸を乱しながら私の腕のでさく震えています。
「ちょっと貧血を起こしただけでしょ。本当にげさなんだから」
母はえ切った線で麻を見ろし、満げに腕を組みました。
「男の嫁なんだから、の法事までにこののワックスがけくらい終わらせてもらわないと困るのよ。親戚の皆さんががったときに恥をかくのは誰だとってるの?」
その言葉に、麻への労わりは1ミリも含まれていませんでした。
奥のには、まだ組みがっていない祭壇の具や、運びされたままのい座卓が何段も積みげられています。
老朽化した造の実をフルリフォームする費用として、私が面した数百万円。
法事の会にするために期を倒しさせ、職が引きげたあとの清掃や仕げの労働を、母はすべて麻ひとりに押し付けていたのです。
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麻の指先は、と洗剤で赤くひび割れていました。 そのを取りながら、私の奥歯がギリッと音をてました。
今すぐ、目のの母に向かって鳴り散らしたい。 仏壇のに並べられた々しい供物を蹴り倒してでも、この理尽を叩き潰したい。
けれど、私は必にその衝をみ込みました。 ここでに鳴れば、母のう壺だからです。 「嫁にそそのかされた息子に鳴られた、暴力を振るわれそうになった」と親戚に泣きつき、同を買う才である母の狡猾さを、私は幼い頃から嫌というほどっていました。
「法事は予定通りやります。ただし、は……」
私はあえて言葉を切り、母の目を真っ直ぐに見据えました。
「は何だって言うのよ? そんなことより、麻さんにくってもらわないと困るの。のお昼には親戚が以来るのよ!」
ヒステリックに響く母の声を完全に無し、私は麻を抱きかかえて玄関へと向かいました。
本来、私の張はまでの予定でした。 しかし、昨晩話で聞いた麻の声の異様な々しさがかられず、胸騒ぎを覚えて急遽最終の幹線にび乗り、夜に駆け戻ってきたのです。 もし予定通りまで留守にしていたら、妻の体と精神はどうなっていたか。 助席に麻を乗せ、夜救急へとをらせながら、私の背筋にはたい汗が流れ落ちていました。
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病院で処置を受け、過度の疲労と脱による急性症状と診断された麻は、点滴を受けながら病のベッドでようやく浅い眠りにつきました。
「健さん……ごめんなさい、私……」
かすかに目をけた麻が、ひび割れた唇から零したのは、謝罪の言葉でした。
「謝るのは麻じゃない。どうしてでここまで無理をしたんだ」
「お義母さんが……『リフォーム代をしてもらったくらいでいい気にならないで。男の嫁の勤めも果たせないなら、このに入りする資格はない』って……」
麻の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちました。 真面目で責任のい麻の性格を、母は完全にい物にしていたのです。
麻が再び眠りについたのを見届け、私は元に置かれていた彼女のトートバッグをに取りました。 から滑り落ちたのは、麻が几帳面に記録していた冊の計簿兼リフォーム管理ノートでした。
ページをめくった瞬、私の血の気が引きました。
そこには、私が母の座に振り込んだ「壁・内装事の追加概算費用」300万円の使途について、信じがたい記録が残されていたのです。
業者から届いた正式な見積と、母が私に請求してきた額には、150万円以の解なきがありました。
さらに、ノートのポケットに挟まれていたの払込受領の控え。
母の跡で記されていた振込先は、リフォーム会社ではなく、実に寄り付きもせず定職にも就いていない私の弟——次男の個座でした。