"義母ATM、全財産を失う" 第5話
親戚たちのには、翔太の振りかざす「実印付きの類」を見て、そうに顔を見わせる者も始めました。 「実印が押してあるなら、やっぱり本物なんじゃないか……」 「健くん、リフォーム代をしたと言っても、親の遺志なら覆せないんじゃないの?」 そんな無責任な囁きが、じわじわと座敷の空気を濁らせていきます。
母はその空気を敏に察し、さらに劇の未を演じようと目を押さえました。 「ええ、そうですとも。私は今まで、男をてるために黙っていました。でも、健のお嫁さんは倒れたふりをして法事をボイコットするような酷なだし、健はおのことばかり……! お父さんも葉ので泣いていますわ!」
翔太は腕を組み、私を見ろしてを鳴らしました。
「聞いたか兄貴? さっさとリフォーム代の請求だか何だからねえが、引っ込めてここからてけよ。ここは今から俺とお袋のなんだからさ」
私は、鳴りもしませんでした。 反論のために声を荒らげることも、呆れてため息をつくことさえしませんでした。
ただ、え切った線で翔太の元にあるそのを見つめ、静かにスーツの内ポケットへとを差し入れました。
指先に触れる、分い公文のみ。
私はそれを引きし、親戚たちの線が集まる座敷の央、塗り直されたばかりの座卓のに音をてて置きました。
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「修叔父さん」 私は、座でじっと腕を組んで成りきを見守っていた叔父に向かってをげました。 「司法士のおから、この類が何をするものか、母と翔太、そして親戚の皆様に確認していただけますか」
修叔父さんは無言で頷き、胸ポケットから老鏡を取りして梁にかけました。 そして、私が差しした封筒から引き抜かれた類を目見るなり、眉をわずかに吊りげました。
「……公正証遺言だな」
叔父のくい声が、座敷のざわめきを瞬で切り裂きました。
「公、正証……?」
母の眉が引きつりました。
「しかも、作成されたのは」
修叔父さんはページをめくり、末尾の公証の署名と職印を確かめながら、淡々と読みげました。
「兄さんが脳梗塞で最初に倒れ、退院した直だ。公証役にて、公証法に基づき作成された、公な遺言公正証原本の正本だ」
「な、何よそれ……! らないわよ、そんなもの!」
母がちがろうとしました。
「お父さんがそんなものくわけないでしょ! 私に言の相談もなく!」
「相談しなかったのは当然です」
私は徹な声で遮りました。
「相談すれば、あなたが騒ぎして握りつぶすことを、父さんは誰よりもっていたからです」
修叔父さんが鏡の奥の鋭い目を翔太に向けました。
「翔太、おが持っているその『』とやらを見せてみろ」
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翔太は気圧されたようにずさりしながらも、「ほ、ほらよ! ちゃんと親父の実印が押してあんだよ!」とを突きしました。
修叔父さんはその片を秒ほど眺め、吐き捨てるようにを鳴らしました。
「話にならん。まず、産の贈与を名乗りながら、作成が空欄だ。それに、この印鑑は兄さんが数に紛失して、すでに法務局および役所で改印届をしている旧印鑑だ。現の登録実印ではない」
「えっ……?」
翔太の顔から、気に血の気が引いていきました。
「形式も件も満たしていない、ただの落きだ。おそらく、おたちが実の古い箪笥の奥から見つけした旧印鑑を、勝にの便箋に押して捏造したものだろう」
修叔父さんの容赦ない指摘に、座敷の親戚たちから「偽造……?」「印鑑を勝に持ちしたのか」と、軽蔑の混じったざわめきが広がりました。
「偽造じゃない! 親父がいたんだ!」
翔太が叫びました。
「仮に、万が兄さんがメモき程度にいたものだとしてもだ」
修叔父さんは公正証を掲げました。
「遺言は、付がしいものが優先される。そして、公証がち会い、本の能力を確認したで作成された公正証遺言は、私文に比べて圧倒な証拠力を持つ。この公正証遺言の第2条を読んでやる」
修叔父さんは背筋を伸ばし、朗々とその文面を読みげました。