"五十万円の便利妻" 第4話
「先、座の続きはにいますか?」
私が顔をげると、先は力く頷いた。
「ええ。かず子様はくなられたお父の正当な第順位の相続であり、あの団の賃貸契約の連帯保証でもあります。また、浩司さんが使っている族カードの引き落とし本座の名義は、お父の座のまま凍結されていませんでした」
先は黒い革の帳をいた。
「本付で、相続たるかず子様からの申請に基づき、当該座の完全凍結続きを完させました。さらに、会社のコンプライアンス統括部へ『共済組貸付の目正使用に関する申』を提し、浩司さんの社内信用照会を保留にかけました。……これで、彼の持つすべての法副カードと族カードは、今夜の決済から止します」
すべてが、静かに、音もなくき始めていた。
* * *
そのの夜、私のスマートフォンは狂ったように震え続けた。
着信画面には『浩司』の文字が点滅を繰り返している。 回、回、回、回……。
夜零を回る頃には、着信履歴は件を超えていた。 メッセージアプリには、取り乱した夫からの文面が滝のように流し込まれてくる。
『おい! なんで話にないんだ!』 『カードが全部エラーになった! どういうことだ!』 『のシステム障害か? 今すぐ実の親父の印鑑登録カード持ってこい!』 『おい! 頼むからろ! 恥をかかせやがって!』
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画面を眺めながら、私はえ切った麦茶を喉に流し込んだ。
浩司は今夜、美穂を連れて座の級鉄板焼きにでも繰りしていたのだろう。 「妻を追いして、今から俺たちは自由だ」と乾杯し、得げにブラックカードを差しした瞬、端末に表示された無なエラーランプ。 青ざめる夫と、ややかな員の線。 現など持ち歩かない浩司が、そのをどうやって凌いだのかは像がついた。歳の誕に、かず子さんが無理をして買い与えた、義父の形見であるオメガの腕計を担保に置いて逃げるようにをたはずだ。
私はスマートフォンの源を落とし、ベッドに入った。 ぶりに、夜に義父の徘徊を警戒してを澄ます必のない、静かな夜だった。
* * *
翌週の曜、午。
浩司から指定された所は、郊の駅にある『サイゼリヤ』だった。 普段の彼なら「っぽくて油臭い、学の溜まりだ」と吐き捨て、絶対に寄ろうとしないファミリーレストランだった。
だが、持ちの現を失い、クレジットカードを止められた彼には、落ち着いた喫茶に入る余裕すら残っていなかったのだろう。
内の番奥のボックス席に、浩司はいた。
その姿を見た瞬、私は危うくち止まりそうになった。 昨まで、あんなに自信に満ち溢れ、「どこまでもれそうだ」
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と笑っていたエリート商社マンの面はどこにもない。
仕ての良いスーツには無数の皺が寄り、ネクタイは曲がり、目のには濃い隈が張り付いている。 何より、彼が自にしていた首の計は、予通り消えっていた。 浩司は貧乏ゆすりをしながら、氷の溶け切った無料のを神経質に睨みつけていた。
「……遅いぞ。何をやってたんだ」
私が向かいの席に座るなり、浩司は周囲を警戒するように声をくして鳴った。
「ごめんなさい。腰が痛くて、歩くのが遅くて」
私が申し訳なさそうに眉をげると、浩司はわずかに堵したようにを鳴らした。 私がまだ、従順で無な妻のままだとい込んでいるのだ。
「まあいい。それより、頼んでおいた親父の印鑑登録カードと実印は持ってきたか?」
浩司はテーブル越しに、焦りを隠せないを差ししてきた。
「そのに、どうしたの? そんなに顔を悪くして」
私が静かに尋ねると、浩司は骨に目を泳がせ、咳払いをひとつした。
「昨、取引先の役と事な会があったんだよ。そうしたらレジでいきなりカードが使えなくてな。のサーバーの具らしいが、恥をかかされた。く親父の座からをかして、別のにまとめなきゃならないんだ。だからく印鑑を渡せ」
嘘をつく、彼のの眉がピクリとねがる。