"余命1年の少年が託した、移植心臓の奇跡" 第12話
し遅れて、レンがゆっくりと、しかし確実に定した取りで歩いてきて、にっこりとをげた。
「おかえりなさい、パパ」
その「パパ」という呼び方に、私は毎回胸の奥がくなるのを覚える。血の繋がりを超えて、この子が自らので私を父親と呼んでくれるみと温かさ。
私はしゃがみ込み、太とレンのを順番に軽く撫でた。
「ただいま、とも。はえるな。洗いうがいをちゃんとしろよ」 「はーい!」
洗面所から戻ると、4分の卓が温かなを放っていた。 央には美都特製の々グラタン、その脇には鮮やかなサラダと、コンソメスープの湯気が揺らいでいる。
席に着き、をわせてから、私たちはスプーンをに取った。 「いただきます!」
レンがグラタンのチーズをスプーンですくい、フーフーと息を吹きかけてからに運ぶ。 「んんー! おいしい……!」
その頬がリスのようにふくらみ、幸福そうな笑顔が広がる。半の青く衰していた顔とはまるで別だ。しく授かった臓は、この温かな卓の景を何つ見逃さないかのように、力く、リズミカルに鼓を刻み続けている。
隣で美都さんが、さく満そうにスープをんでいる。
私はふと、ポケットからさなメモ帳を取りした。それは、あの病院の病でレン君がいた「やりたいことリスト」
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のコピーを、ラミネート加して帳に挟んでいたものだった。 『りたい』『サッカーがしたい』『運会にたい』『お母さんを笑わせたい』 そのほとんどが、すでに常の形として叶えられている。運会ではリレーのアンカーをり切り、放課はグラウンドで汗を流し、毎のように美都さんを笑顔にさせている。
私はスプーンを置き、グラスのを含んでから、族全体を見渡した。
「なあ、来週の連休さ」
私の声に、4対の目が斉にこちらを向く。
「温泉にこうか。見呂のある温泉だ。レン君も、お医者さんの許がてる」
レンが目を輝かせた。 「本当!? 見呂……!」
太も両を叩いてぶ。 「やったー! 温泉卵べる!」
美都さんはしだけ目尻をげ、困ったような、しかし嬉しそうな笑顔で私を見た。 「健太郎さん、荷造り、私ちゃんとやるからね」 「ああ、頼むよ。みんなでこう。族旅だ」
のはしずつ勢いを増し、ベランダの向こうの夜空を静かにく染めていく。 傷だらけだった私たちのは、今は迷うことなくしっかりと結びついている。 臓の鼓が、族の温もりを乗せて、どこまでも優しく響いていた。
週。 私たちは、約束通りいあいの温泉宿へ到着していた。 窓から見える景はいに包まれ、々の枝にはいが咲いたような美しい景が広がっている。
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太はチャイルドシートので体を乗りし、「わあ、まっだー!」と声を弾ませた。 レンも、その横でマフラーの端を元にあてながら、静かに目を細めて窓のを眺めている。 その横顔には、かつてのようなは微もなく、ただ旅のワクワクとしたらしい輝きがあった。
宿の女将の温かい迎えを受け、私たちはの部に荷物をろした。 畳のりと、部の奥からほのかにる硫黄の匂いが、よい旅の始まりを告げている。 「さあ、夕のに、しだけ温まろうか」 私がそう声をかけると、太は「やったあ!」と畳のでさくねがった。
夕までのい、私たちは浴へと向かった。 内湯を抜け、造りの引き戸をけると、ひんやりとしたの気が頬をかすめ、その直にふわりと湯気が全を包み込んだ。 目のには、の庭園と、しんしんとがい落ちる呂が広がっていた。 「わぁ……綺麗……」 美都さんがわず息を呑み、湯の縁にをついた。
私は、レンの肩に掛けたバスタオルをそっとし、そのさな背を見つめた。 術跡のわずかな痕は残っているものの、呼吸は穏やかで、背骨のラインも以よりしっかりとしている。 「レン君、元滑るから気をつけてな。パパがをつなぐよ」 私がを差しすと、レンは「うん!」
と力く頷き、私のきな掌をぎゅっと握り返した。
お湯に浸かる。