"余命1年の少年が託した、移植心臓の奇跡" 第16話
の医局にを置いていた。
の、ややかな朝。
学病院のオペ(術)の自ドアが、い空気を含んで滑らかにいた。
グリーンのスクラブにを包み、子とマスクを装着したレンは、洗いでの入な消毒とブラッシングを終え、分を拭き取ったをく掲げたまま、無灯のへとを踏み入れた。
属と消毒液の匂い。モニターが刻むリズミカルな子音。
オペ台の脇で、グラブを装着しながら振り返ったのは、のとは異なる鋭い差しをたたえた健太郎だった。
「……おはようございます、先」
「おはよう、レン。消毒は完璧か」
「はい」
今の患者は、かつてのレンと同じ、先性疾患を抱えるさな女児だった。胸骨正切の準備がいつつある。
「第助、入れるか」
健太郎のい声が響く。
「……はい、入れます」
レンは滅菌ガウンを羽織り、際よくグローブを滑り込ませた。
胸骨がき、リトラクターで組織がゆっくりと押し広げられる。
その界のに現れたのは、さな、しかし懸命に震えながら脈打つ臓だった。
(トクン、トクン、トクン――)
モニターの波形が緑のを描く。
レンの胸の奥でも、10に誰かの温もりから受け継いだ鼓が、まるで同調するかのように、静かで力いリズムを刻んでいた。
「レン。ここからの吻(ふんごう)、野はりているか。
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組織を逃がすなよ」
「……見えています。いけます」
レンはに鑷子(ピンセット)、に持針器を構えた。
の震えは、もうない。
あのの池の縁で、凍えながら「使になる」と零したは、もうどこにもいなかった。自分の胸にある命のみをっているからこそ、彼はの命の危うさと尊さを、指先の触すべてで理解できていた。
極の血管を縫いわせる、息を呑むような数分。
血管夾子(クランプ)がされ、血流が再される瞬が訪れる。
(……戻れ)
蒼だった筋が、温かい血流を受けてふわりと赤みを帯び、自律なリズムを取り戻していく。
モニターの波形が、力いを連続して描いた。
「……血流再、良好です。脈なし」
レンのマスクの奥の唇が、わずかに、しかし誇らしげに緩んだ。
健太郎は、グローブのまま、レンの肩をぽんと力く叩いた。
「……来だ。いい技だったぞ、ドクター・レン」
その言が、これまでの病の苦しみも、夜の恐怖も、すべてを黄のに変えて洗い流していくようだった。
――夜。
すべてのオンコールと記録を終え、レンが自宅のドアをけると、玄関のかりのから温かな匂いが迎えてくれた。
「お兄ちゃん、お帰り! 今ね、学でテスト100点だった!」
学へとんだ太が、きくなった体で玄関にびしてくる。
「すげえじゃん、おめでとう」
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「お帰りなさい、健太郎さん……じゃなくて、レンも、お疲れ様」
キッチンからエプロン姿の美都さんが顔をし、そのには湯気のつビーフシチューの鍋が握られていた。
リビングのテーブルのには、あのボロボロになった「やりたいことリスト」の隣に、しいと聴診器が誇らしげに掛けられている。
テーブルを囲んで4が腰をろす。
「いただきます!」
スプーンがシチューの器に入る音。
太の笑い声。
美都さんの優しい差し。
そして、レン自の胸の内で鳴り響く、誰のものでもない、確かな自分のきている音。
窓のでは、夜の気のでが静かに瞬いていた。
傷だらけだった私たちは、もう迷わない。
もまた、誰かの「おはよう」と「ただいま」を迎えるために、この温かな臓は力く、のほうへ脈を打ち続ける。
。
学病院の児臓血管科・主任。 窓のには、かつてよりしくなったビル群と、変わらず青いの空が広がっている。 の胸ポケットに収められた聴診器。そのたい属の触に触れる度、レンは18歳の自分をいす。あの池の縁で「使になる」と零し、え切った指先で世界を閉ざそうとしていたは、もうどこにもいない。
コン、コン。 ノックの音とともに、シニア・アドバイザー(名誉顧問)としての指導にあたっている、髪混じりの健太郎がドアをノックして顔をした。
「レン、次のカンファレンスまで分だ。