"5足の男物スリッパと偽装不倫の罠" 第1話
義母ののり子は、私の仕事机のに無造作に巻き尺を置いた。
その横では、義妹のマリカが私の仕事用の子にどっかりと腰をろしていた。
私は静かに部の入りにち、その景を見つめていた。
夫の裕介は今、仕事でだった。
のり子は振り返り、私に向けて淡々とした声をした。
「この部は来からマリカに使わせるわ」
私は喉の奥までかかった反論の言葉を、ぐっとたい息と共にみ込んだ。
今ここでのままに声を荒げてしまえば、ようやく変わり始めた夫を、また母親との板挟みにすることになる。
私は黙ったまま線を伏せ、じっと耐えることを選んだ。
けれど、のり子が私の机の引きしへ伸ばしただけは、決して見逃さなかった。
そこには、このの権利を示す登記の類が入っていたからだ。
のり子が欲しがっていたのは、単なる部だけではなかったのだ。
のり子は、私が黙ったままでいるのをいいことに、勝に机の引きしをけようとした。
私は咄嗟にへみると、そのよりも先に引きしの鍵穴へ鍵を差し込み、カチャリと音をてて鍵をかけた。
「仕事の資料がありますので、触らないでください」
私の声は、自分でも驚くほど静かでたかった。
マリカは子の背にくもたれかかり、値踏みするように部の隅々を見回した。
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「この机を窓側へ寄せれば、ベッドも置けそう」
私はマリカの顔をまっすぐに見据えた。
「ここは私の仕事部です。自宅で打ちわせもしますから、空けることはできません」
マリカは満げにを尖らせた。
「族が困っているのに、自分の仕事ばかりなんだ」
のり子はわざとらしく娘をなだめるふりをして、マリカの肩の方へを置いた。
「マリカも言い方が悪いわよ。咲さんは族より自分の都を切にするなのだから」
のり子の調はひどく穏やかだった。
だからこそ、その言葉はい刃のように私の胸の奥にたく残った。
私は机の端に置かれた自分の湯呑みへを伸ばし、そっと持ちげた。
に入っているお茶は、すでにすっかりめきっていた。
このは、私たちが結婚して2目に買ったさな戸建てだった。
のくは、私が独代に苦労して貯めたおからしていた。
裕介も毎の宅ローンを、私と同じように負担している。
だからこそ、の登記は夫婦の共名義にしたのだ。
それを決めた、裕介は私を見て優しく笑っていた。
「2で働いて、2で守るだからな」
しかし、のり子はその言葉を聞いたから、あからさまに嫌になった。
のり子は当のことをいすように、満げな顔を作った。
「息子のに嫁の名まで入れるなんて、聞いたことがない」
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私は過に何度も、名義についての説を繰り返してきた。
名義は決して、誰かを押しのけるためのものではない。
夫婦2で負担する責任を、そのまま形にしただけだと丁寧に伝えた。
けれど、のり子にとっては全く違ったのだ。
類に私の名があるだけで、する息子が奪われた証拠に見えるらしかった。
マリカは再び巻き尺をに取ると、ちがって壁から窓までの距を測り始めた。
その図々しいきに、切のためらいはなかった。
私はくを握りしめた。
「やめてください」
私がし声を張って言うと、マリカは面倒くさそうに目をこちらへ向けた。
「まだ何も決まってないじゃない。寸法を見るくらいいいでしょう」
私は歩だけへた。
「決まっていないことを、私のいないところで決めないでください」
その、のり子の表からすっと作り笑いが消え失せた。
のり子はややかな目で私をねめつけた。
「嫁のくせに、随分い言い方をするのね」
廊にかかっている計が、午3をらせるい子音を鳴らした。
い音が響いた、のが妙に静まり返った。
のり子は私の顔を見ようとせず、鍵の閉まった引きしへじっと線を落とした。
「の類は、ここに入っているの」
私は固く唇を結び、切の返事をしなかった。
ただ部を欲しがっているだけのが、なぜ登記の類の所を気にするのか。