みかん小説
本棚

"雑炊を疑った息子とノロ陽性の判定" 第23話

玄関の気をつける気力もなく、靴を履いたまま廊にへたり込みます。

静寂が彼のを痛いほど打っていました。

方、私は自宅の台所にっていました。

の支度を終え、綺麗に磨きげられた平鍋を布巾で拭いています。

私の常は何つ変わっていません。

自分のち、自分の力できている限り、私の活が誰かに脅かされることはないのです。

ふと居の固定話が鳴りました。

こんなに誰だろうと、私は鍋を置いて受話器を取りました。

「はい。本です。」

話の向こうから声がしました。

「母さん。」

ひどく掠れたけない声、健太でした。

私は切のを交えずに答えました。

「何の用。」

健太はすがるように言いました。

「どうしたらいい。」

健太は泣きそうでした。

「美咲が実に帰るって。」

健太の声は怯えるように震えていました。

泣きつけば私がなんとかしてくれる。

私が美咲さんの実げて彼を許してもらうように計らってくれる。

彼はそんなを見ていたのです。

私は静かに息を吸い込みました。

30彼に言いそびれていた言葉を、今こそ伝えるでした。

「健太、あなたがどうするかは自分で考えなさい。」

その言が彼の最の甘えを完全に切り裂いたことでしょう。

私は健太が何かを言い返すに、静かに受話器を置きました。

広告

受話器を置いたも、私はしばらくを見つめていました。

ツーツーという無質な音が、静かな居さく響いています。

健太の甘えを完全に断ち切った瞬でした。

胸の奥にほんのしだけたいが吹き込んだような気がしました。

30守り支え続けてきた、私自の母親としての役割がつ終わった音だったのかもしれません。

私はゆっくりとがり、台所へ戻りました。

の支度を再しながら、私は自分の決断が正しかったのだと静かに自分に言い聞かせていました。

方、健太は暗いマンションの廊にへたり込んだままけずにいました。

自分で考えなさい。

母親から放たれたその言が、彼ので何度もリフレインしています。

これまでどんなきな失敗をしても、最には必ず母親が助けてくれました。

りなければそっと通帳を渡してくれた。

誰かとトラブルになれば代わりにげてくれた。

それが親のだと信じて疑わず、自分はその傘のきていけるとっていたのです。

しかしその巨な傘は、今完全に閉じられました。

健太はフローリングのたさをじながら両を抱えました。

「俺が何をしたって言うんだよ。」

誰もいない部けない声が響きます。

広告

洗いをしサボっただけだ。」

彼はまだ言い訳をしていました。

「腹が痛かったけれど、仕事があるから無理して社しただけだ。」

彼は理解できませんでした。

「どうしてそれがこんなに取り返しのつかない事件になってしまったのか。」

彼のっぺらい像力では、自分のさな怠が病院や会社という社会全体を巻き込むバイオハザードになったという現実を、まだ処理しきれていませんでした。

蔵庫のモーター音がブーンとく鳴っています。

その音が健太の孤独をさらに際たせていました。

同じ頃、民病院の産婦科病棟、美咲さんは隔された個のベッドに座っていました。

は完全にがり、体調はしずつ回復しています。

彼女の腕のには護師が連れてきてくれたさな赤ちゃんが抱かれていました。

さな呼吸音、温かい体温。

その確かな命のみをじながら、美咲さんは静かに涙を流していました。

それは健太に対する絶望と私に対する悔の涙でした。

「ごめんね、お母さん。バカだったね。」

美咲さんは赤ちゃんのさな頬に自分の頬を寄せました。

彼女は役所でくの庭の問題を処理する部署にいました。

だからこそのどこかで軽蔑し、データと基準だけを信じてきたのです。

しかし自分がにいる夫ので無責任な本質から目を背けていました。

健太が私を犯だと決めつけた、彼女もそれに乗っかりました。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: