"名前を消された入園届" 第2話
「荷物ごと、今すぐていけ。これ以ここで騒ぐなら、警察呼ぶからな。狂った嫁に暴れられてるって」
「康平さん、陽菜を……陽菜の保険証だけでも……」
「うるさいな!」
康平のが、私の肩を乱暴に突きばした。 私は背から玄関の鉄扉に叩きつけられた。とっさに両腕で陽菜のを庇う。 ガツン、と部が鉄板にぶつかり、界が瞬く滅した。陽菜が「ひっ」とさな鳴をげ、私の胸に顔を埋めて泣き始めた。
ドアノブが内側から回された。 たいが、いた隙から気に吹き込んできた。 11旬の、埼玉の凍てつくような夕暮れのだ。
「ほら、さっさとろ!」
康平のが、黄いレジ袋をの放廊へと蹴りした。続いて、のお昼寝布団バッグが、コンクリートのを滑っていく。 私はよろめくで、抱っこ紐のバックルがれないよう必に押さえながら、敷居を跨がされた。
カチャリ。
背で、い鉄の扉が閉まった。 髪を入れず、属同士が噛みう酷な音が響いた。
ガチャン。 ギリギリ、ガタ。
ドアチェーンが掛けられ、デッドボルトがに回される音。 私は、築40を超える県営団の、暗い4階の放廊に放りされていた。
廊の蛍灯が、チカチカと気に滅している。 が吹き抜けるたび、UNIQLOのいカーディガンを通り抜けて、氷のような気が汗ばんだ肌に突き刺さった。
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元には、破けたレジ袋からこぼれた私の着と、に汚れた陽菜の赤い靴。 そして、のお昼寝布団バッグ。
の芯がじんじんと痛んだ。 何が起きたのか、脳が報の処理を拒絶していた。 あと48。 あと48で、待ちに待った認保育園の利用調に伴う、役所職員の「庭訪問・現況確認」が入るはずだった。
待児童が溢れるこの域で、取り24万の夫と、パート勤務の私。点数はギリギリだった。私がパートのシフトを週5に増やし、雇用証を揃え、何度も役所の保育支援課にを運んで、ようやく勝ち取った「内定」だった。この保育園に陽菜が入れば、私は正社員雇用のを探し、康平の顔を伺わずにきていけるはずだった。
なぜ、今なのか。 なぜ、曜の朝に役所が来るという、このギリギリのタイミングで、私は着の着のままで追いされなければならなかったのか。
私は震えるで、陽菜の背をポンポンと叩きながら、団の階段の踊りへとを向けた。 エレベーターのない、埃っぽいコンクリートの階段。 踊りの角にしゃがみ込むと、たいが首を撫でていく。 陽菜がぐずりながら、私の胸元を探るようにさなをかしていた。お腹が空いているのだ。夕飯の支度をしている最に、康平が帰ってきて、いきなりあの茶番が始まったのだから。
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ポケットので、古いスマートフォンを取りした。 画面には、細かいヒビが入っている。バッテリーの残量は34パーセント。
通話履歴をく。 番には、昨夜康平にかけた履歴。 そのには、パート先のベーカリーの。
そして、履歴をずっとへ、3まで遡らなければてこない、ひとつの番号があった。
「父」
武鉄の線保守員を40務め、定退職したは、沿線の古い造アパートで暮らしをしている私の父親。 3、康平との結婚を報告した夜の景が、鮮に蘇る。
『あの男はやめておけ』
父は、醤油の染みがついた湯呑みを畳に叩きつけるようにして言った。
『ありゃあ、の汗に寄してきるの目だ。自分のでとうとしとらん。お、絶対に悔するぞ』
『お父さんに康平さんの何がわかるのよ! 油まみれで線いじってきたお父さんに、私の幸せを決めつけないで!』
私はそう叫んで、アパートの引き戸を叩きつけるようにしててった。 それ以来、度も連絡を取っていなかった。陽菜がまれたことすら、伝えていなかった。
かじかんだ指先が、発信ボタンので激しく震えた。 プライドが、恥の識が、私の指を止めようとする。 自業自得だ。おが選んだ男だ。父の言う通りだったとをげて、どんな顔をして助けを求めればいいのか。
「う……あ……」
胸元で、陽菜がさくしゃっくりをげた。