"名前を消された入園届" 第9話
父の乾いたが、私の震える肩のに、ドンと置かれた。 く、いだった。 気を含まない、だが絶対に揺らぐことのない量が、そこにあった。
「泣いてる暇はねえぞ。敵は、もう次のを打っとる」
父は線を座卓の端に向けた。 そこには、父の古い黒話の受話器が置かれていた。 壁から伸びるモジュラーケーブルが、茶く変している。
「話しろ」
「話……? どこに……?」
「役所だ。夜の緊急窓があるはずだ」
「でも、今は曜の夜だよ? もう半を過ぎてる……保育課のなんて、いるわけが……」
「おがさっき見たメールは何だった」
父が言った。 私はハッとして、自分のスマートフォンを見た。
『保育施設等利用辞退届の事審査を受理いたしました。受付:1715分』
「窓の業務は分までだ。あいつらは、曜の閉庁際に駆け込んで類をねじ込んどる。なぜだとう」
父は、細めた目をストーブの炎に向けた。 鉄の現で、幾度となく事故の隠蔽や正を見てきた男の、酷な推論が紡ぎされる。
「は役所が休みだ。おが異変に気づいても、曜の朝までしができん。そして曜の朝には、入園の内定取り消しと、しい世帯状況の確定が同に処理される。あいつらは、おに反論の隙を与えんために、あえて曜の夕方を選んで続きをしたんだ」
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背筋が、氷を流し込まれたようにたくなった。
「だが、県営団のような公営宅や、乳幼児の絡む福祉案件には、必ず当直のケースワーカーか、緊急の対応部署が輪番で残っとる。宿直の窓に繋げ。おがきとること、そして、辞退なんぞしとらんことを、今夜のうちに公な記録として残させろ」
私は涙をの甲で乱暴に拭った。 泣いているではない。 父の言う通りだ。 ここで私が絶望して倒れたら、曜の朝、すべてが康平たちの筋き通りに完してしまう。
私はちがり、黒話のに膝をついた。 い受話器を持ちげる。ツーーー、というい発信音がに届く。 スマートフォンの画面で、さいたまの代表番号を検索し、ダイヤルを回した。
ジーコ、ジーコ、と指を通す穴が回転し、属な械音が部に響く。 数秒の呼びし音の、く嗄れた男性の声がた。
『はい、さいたま役所、夜警備当直です』
「夜分遅くに申し訳ありません」
私は、自分の声が震えないよう、腹の底にぐっと力を込めた。 呼吸をえ、語語、はっきりと発音する。
「保育支援課の案件で、至急、記録を残していただきたいことがあります。児童の命および福祉に関わる、緊急の申してです」
『あ……ええと、保育課の窓はすでに終しておりまして、曜の午半以に……』
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「曜では遅れになるんです」
私は相の事務な断り文句を、い調で遮った。
「私の名は、横瀬。現、認保育園の内定がている児童、横瀬陽菜の母親です。本分、私の夫である横瀬康平が、私の名を偽造し、虚偽の申を添えて『利用辞退届』を提しました。私は切、辞退に同していません」
話の向こうで、当直員の息を呑む気配がした。
『偽造……ですか?』
「はい。私は本夕方、夫と義妹によって、子供とともに着の着のままで居から制に追いされました。現、配偶者からの経済虐待および精神虐待による、事実の避難状態にあります」
私は、トートバッグの底から引きずりしたマイナンバーカードを指先でなぞった。
「私の個番号と、陽菜の母子帳の交付番号を今からお伝えします。この通話の記録を、夜の引継ぎ誌に公文として残してください。そして、曜の朝番で保育支援課の課および担当官に、『辞退届の処理を即凍結すること』、および『本案件にセキュリティロックをかけること』を伝達してください」
受話器の向こうで、慌ただしくペンがる音が聞こえた。 当直員の声のトーンが、単なる酔っ払いの苦対応から、な福祉事故を防ぐための緊張へと切り替わったのが分かった。
『……横瀬さん、分かりました。お母様、今はお子さんとご緒ですか? 全な所にいらっしゃいますか?』