"名前を消された入園届" 第13話
昨夜のうちに、父が駅のセブンイレブンのマルチコピーで力してきたものだ。
『受理申』
見慣れない文字が、黒の印字となって目にび込んでくる。
「……受理申?」
「あいつらが夜投函にねじ込んだ類を、無力化するための防壁だ」
父は作業着の袖をまくりげ、節くれだった指で類の枠内をく叩いた。
「戸籍法と民基本台帳法に基づく正規の続きだ。本以の者が、勝におの名を使ってす『民異届』や『婚届』を、役所の窓で切受け取らせんための制度だ。これを先にしておけば、いくらあいつらが偽造した実印を押してそうが、窓の械が自で弾く」
「でも、お父さん……あいつらはもう、昨の夜のうちにあの投函に類を入れちゃったんだよ? もう遅れなんじゃ……」
「投函に入った類は、曜の朝半、庁と同に職員が回収して初めて『受付』になる」
父の目は、寝で赤く充血していたが、その奥にあるは異様なほど澄んでいた。
「当直の誌には、昨夜の話の記録が残っとる。そして今の曜、区役所には休対応の戸籍・民票の臨窓が午だけく。あいつらが投函に入れたが本庁の担当課に回るに、この申を対面で直接叩き込んで、受領印を押させるんだ」
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父の言葉には、迷いがなかった。 、巨な鉄の両が秒単位で運する現で、全順をつでも違えればがぬという極限にを置いてきたの、徹な段取りだった。
私は震える指でペンを握り、自分の氏名、、民票コード、そして本籍をき込んだ。 インクが滲まないよう、慎に、息を詰めて枠を埋めていく。 最に、昨トートバッグの底板から取りした、本物のマイナンバーカードの番号を転記した。
「よし。くぞ」
父は、陽菜を自分の古びたジャンパーの内側に抱きかかえた。 陽菜は、父の胸板のさにし戸惑ったように目を丸くしていたが、父が作業用のの袋をしたでをそっと撫でると、しくその胸に顔を埋めた。
にると、の凍てつくようなが、容赦なく傘を叩いた。 軽トラックの助席に乗り込み、濡れたドアを閉める。 かい吐息がガラスを曇らせ、ヒーターの吹きしから古い埃の匂いがち込めた。
ワイパーが、激しい滴をゴムの軋む音とともにに払いのける。 曜の朝の幹線には、距トラックと、朝勤務のタクシーしかっていなかった。 世界全体が、たいの底に沈んでいるようだった。
午分。 さいたま某区役所の、裏にある休・夜受付。
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い自ドアをくぐると、の効いていない、え切ったコンクリートとビニールクロスの匂いがをついた。 休の庁舎は静まり返り、蛍灯が引きされた暗い通の奥に、ぽつんとパイプ子と製のカウンターが置かれていた。
カウンターの奥には、首から分証をぶらげた、代半ばの男性職員が、眠そうにパソコンの画面を眺めていた。
「すいません」
父のく嗄れた声が、無のロビーに響き渡った。 職員がビクッと肩を揺らし、鏡の奥からこちらを見げた。
「あ、はい……本は休の庁ですが、民票の即交付や部の届のみとなっておりまして……」
「受理申をしに来た」
父は、私がいたA4の用と、私のマイナンバーカード、そして陽菜の母子帳を、カウンターのに滑らせた。 が擦れる乾いた音が、静まり返ったフロアにさく反響する。
「それから、昨夜の当直誌を確認しろ。保育支援課と福祉課宛てに、横瀬の名義で緊急通報が入っとるはずだ」
職員の表が、瞬で事務な弛緩から、張り詰めた警戒のへと変わった。 男は素くちがり、カウンターの脇にある黒いバインダーをめくった。昨夜の宿直引き継ぎだった。 ページを指で追う職員の目が、あるで止まる。
「……横瀬さん、ですね」
職員は、父の腕のにいる陽菜と、私の青い顔を交互に見つめた。
「昨夜、分に当直が受領したメモがあります。