"名前を消された入園届" 第22話
階の放廊。 〇号の玄関ドアのにつ。 ドアのポストからは、消費者融の督促状とおぼしき封筒の端が、何枚か覗いていた。
ピンポーン。
女性職員が、インターホンのボタンを押した。
数秒の静寂の、からバタバタと慌ただしい音がづいてきた。
ガチャリ。
ドアチェーンがされ、鉄扉が勢いよくいた。
「はいはーい! どうぞどうぞ! お待ちしてました!」
玄関に現れたのは、志織だった。 化粧をし、いつもの毛玉だらけのフリースではなく、どこからか引っ張りしてきたような清楚なニットを着ていた。 その腕には、歳になる息子の蓮斗が抱かれている。 志織の顔には、完璧な「良き母親・献な叔母」を取り繕った、わざとらしい笑顔が張り付いていた。
だが、その線が、職員たちの背につ私と父を捉えた瞬。
志織の笑顔が、凍りついた。
「……は? な、なんで……」
「失礼します。さいたま保育支援課、ならびに福祉監察課です」
男性職員が帳を提示し、志織がドアを閉める隙を与えずに、革靴の先を敷居の内側へと踏み入れた。
「横瀬康平さんはいらっしゃいますね。現況確認調査をいます」
職員たちに押し込まれるようにして、私たちは玄関をがった。 リビングに入ると、そこには目を疑うような景が広がっていた。
っぽい折りたたみ式の座卓のには、急須とお茶菓子が並べられていた。
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そして、座の座布団のに、康平が座っていた。 スーツのを雑に拭き取ったのか、ズボンの膝は濡れて黒ずんでいたが、髪をえ、精杯の「誠実な父親」の表を作っていた。
座卓の真んには、さっきで奪い取られた、あの角形号の茶封筒と、黒い印鑑ケースが、誇らしげに鎮座していた。
「あ、役所の皆さん、ご苦労様です」
康平はちがり、々とをげた。 だが、その線が私の姿を捉えた、彼の喉から「ヒッ」とい引きつった音が漏れた。
「……お、なんで……」
康平の顔から、急速に血の気が引いていった。 潮していた頬が、気へと変わる。
「お、さっき……」
「横瀬康平さん」
監察課の男性が、徹な声で遮った。 部の央へみると、パイプ子も勧められていないのに、座卓の正面にった。
「今朝のお話で、『妻の実印と、保育園利用に必な原本式を回収した』とおっしゃいましたね。現、こちらの机のにあるものが、その類ですか」
康平は揺を隠すように、げさに咳払いをした。 そして、自分を奮いたせるように胸を張り、机のの茶封筒にを置いた。
「そ、そうです! ここに全部あります! 妻のは度の育児ノイローゼで、今朝も子供を連れて逃げようとしたんです! 私がなんとか説得して、類と印鑑だけは取り戻しました! 子供の福祉を考えれば、これ以あんな精神定な女に預けるわけにはいきません!」
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康平は気にまくしてた。 その横で、志織も必になってを挟む。
「そうなんです! 私、これまでもずっと陽菜ちゃんの面倒を見てきたんです! 私の息子の蓮斗と緒に、この部でを育てていきますから! 蓮斗も陽菜ちゃんも、認保育園に入れないと、私たちの活が成りたないんです!」
の必なアピール。 の権利を奪い取るための、見え透いた嘘の陳列。
保育園の園が、ややかな目で部を見回していた。 の隅には、脱ぎ捨てられた志織の着と、潰れたストロングゼロの空き缶が積みになっていた。子供の全など微も考慮されていない、荒れ果てた部の惨状。
「では、確認させていただきます」
保育支援課の女性職員が、ゴム袋をはめたで、机のの茶封筒を引き寄せた。
「けてください。原本と、実印の印を照します」
「あ、どうぞどうぞ! 本物ですから!」
康平は自信満々に言った。 その顔には、ので勝ち誇ったの、あの歪んだ優越が瞬だけ戻っていた。
職員が、封筒の封をけた。 康平がで力づくで引き裂いたため、すでにはいていた。
職員の指先が、に入っていたの束を引きす。
スッ。
机のに滑りしてきたのは、枚のだった。
枚目。 『ドラッグストア・セキ 週末謝セール トイレットペーパー特売』とされた、派な黄のチラシ。