"名前を消された入園届" 第24話
父は、類を康平の目のの座卓に叩きつけた。
「今朝、公社の管理事務所へ解除通を提してきた。ち退き期限は、今からだ」
「た……ち退き……?」
康平のから、掠れた声が漏れた。
「俺の……だぞ……? 俺が毎、賃を……」
「賃の引き落とし座は俺の名義だ」
父はたく切り捨てた。
「おが俺の座に振り込んどったは、ここヶ、円も入っとらん。滞納分は全部、俺のからて替えとったんだよ。おには、この部の敷居を跨ぐ権利すら、最初から残っとらんのだ」
すべてが、終わった。 を奪い、妻を追いし、子供の当を着して妹の犯罪を隠蔽しようとした男の、っぺらなが、音をてて崩れ落ちた。
私は、抱っこ紐の陽菜をしっかりと抱き直しながら、机のへとみた。 そして、自分のコートのポケットから、あのジッパー付きの透袋を取りした。
から、本物の緑の母子帳を取りす。 そして、さいたま認保育園の、利用内定通の原本。 私のパート先であるベーカリーのが、几帳面な字で証してくれた、週の就労証原本。 最に、黒牛の本物の実印。
それらを、女性職員のに、静かに並べた。
「保育支援課の皆様」
私の声は、静かだった。 震えも、りもなかった。 ただ、たく澄み切った、母親としての志だけがあった。
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「こちらが、横瀬陽菜の母子帳原本、ならびに正規の提類式です。私は、陽菜の利用辞退に切同しておりません。夫からの暴力および法為を受け、本付で夫との別居を完し、実父の元に拠点を移しました」
女性職員は、類を枚ずつ、極めて慎に確認した。 帳の検診記録のスタンプ。予防接種のシール。就労証の代表者印。 そして、端末の画面と照する。
「……確認いたしました」
職員は顔をげ、私に向かってく礼した。
「横瀬様ご本の就労実態、ならびに児童の監護状況に問題はありません。ご主が提された『利用辞退届』は、虚偽の申によるものとして、政続法に基づき、即職権破棄といたします。横瀬陽菜ちゃんの認保育園への入園内定は、当初の決定通り、効に継続されます」
「ありがとうございます」
私はく、をげた。 界の端で、保育園の園が、私と陽菜に向かって優しく微笑み、さく頷いてくれたのが見えた。
「……!」
にへたり込んでいた康平が、うようにして私の元へ縋り付いてきた。 に汚れたが、私のコートの裾を掴もうとする。
「、頼むよ……! 俺が悪かった! 全部、志織に唆されたんだ! おしかいないんだよ! 会社にも借がバレて、もうがないんだ! 陽菜の父親だろ!? 助けてくれよ……!」
かつて、私が嫌われないようにと顔を伺い、夜遅くまで帰りを待ち続けた男。
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その男が今、私の元で、を垂らしながら見苦しく命乞いをしている。
私は、歩、ろへ引いた。 男のが空を切り、たい畳のに落ちる。
「私のったことじゃないわ」
私は、康平の目をまっすぐに見ろした。
「昨、陽菜の靴を蹴ばした、あなたの族はんだのよ。度と、私たちのに現れないで」
背で、父がく告げた。
「警察を呼ぶに、荷物をまとめろ」
それが、最の言葉だった。
私たちは、度も振り返ることなく、〇号の玄関をた。 背で、志織の絶叫と、康平の泣き叫ぶ声が、閉まりかけた鉄扉の隙から漏れ聞こえていたが、それもい属音とともに完全に遮断された。
階段をりると、がすっかりれ渡っていた。 たく澄んだの青空が、団の根のにどこまでも広がっていた。
陽菜が、私の胸元からさな顔をし、眩しそうに空を見げていた。 私は娘の柔らかい頬に、自分の頬をそっと寄せた。 温かかった。 この子の命も、居所も、すべて私の腕のに守り抜いたのだ。
それから、ヶが過ぎた。
の旬。 厳しいの寒さの底を抜け、朝のの角がしだけ丸みを帯び始めた曜の朝。
午分。 武線の線沿い、駅から徒歩分の所にある、築のさな造アパートの。
賃万千円の、畳の1K。
部のには、トーストの焼けるばしい匂いと、物のインスタントコーヒーの湯気が満ちていた。