"奪われた十八年の通帳" 第16話
これらは都内の買い取り専で換され、の遊興費に消えていました」
胃の奥が、たく凝固していく。
私が夜勤の気ので、ドラム缶のを落とし、あかぎれのを痛めながら貯めていた百万円。 敏之はそれを毟り取っただけでは飽きらず、会社のにまでを付け、あの女に貢いでいたのだ。
「そして……もう点」
沢田の声のトーンが、段とくなった。 彼は田会と線を交わわすと、ファイルから枚の警察の事故報告の写しを取りした。
「半の、未。曲峠における、玲奈の弟――翔太氏の事故です」
面には、無残に破した黄い軽トラックの写真が黒で印刷されていた。
「警察の処理は、過労による居眠り、カーブでの曲がり損ねによる単独転落。……しかし、々が当の運記録を精査したところ、解な点がすぎた。まず、翔太氏には度の療育帳が交付されており、夜の距運など到底能な状態だった。それを、佐藤敏之が『簡単な横持ち配送だ』と騙してハンドルを握らせていた」
「それだけではありません」
私は膝ののバッグのジッパーをけた。 聞の包みを取りし、テーブルのでゆっくりと広げる。
カサリ、と乾いた音がして、から現れた黄い鉄の残骸。 歪んだ鉄板の溝に、と緑の塗料が、まるで傷にこびりついた膿のように固着している。
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沢田弁護士の目が、鋭く細められた。 田会がを乗りし、息を呑む。
「これは……」
「敏之のの塗料です」
私は極めて静に、事実だけを並べた。
「昨夜、敏之のクラウンのトランクのスペアタイヤの底から、空になったロングライフクーラントのポリ容器と、午分の曲料の領収を見つけました。敏之は、事故の瞬に現にいたのです。そして、この傷。……翔太さんの軽トラックは、ろから敏之のに接触され、崖へと押しされた痕跡です」
応接のが、完全に凍りついた。 油ストーブの炎が、ボッとさく音をてる。
「……信じられん」
田会が、青ざめた唇を震わせた。
「あいつらは……そこまで……の命を……」
「は、です」
沢田弁護士が、え切った声で言った。
「翔太氏には、運送組の包括共済から、百万円の保険が支払われていました。受取は、実の姉である玲奈。そして、佐藤敏之はその保険がた直、個座の消費者融からの借入百万を括返済しています。……業務横領の発覚を恐れた敏之が、穴埋めのを作るために、玲奈と共謀して仕組んだ疑いが極めて濃です」
の欲望の底が、これほどまでに暗く、濁っているものなのか。
敏之と玲奈。 が寄り添い、甘ったるいの匂いを漂わせながら、障害を持つ弟を夜のへと送りし、崖へと突き落とす景。
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そして、その血で濡れたで借を返し、残ったで万円のペアウォッチを買い、伊豆の呂で抱きっている。
吐き気すら、もう湧かなかった。 私ののにあるのは、ただ、の夜の底のような、果てしない静寂だけだった。
「登紀子さん」
沢田弁護士が、ファイルを閉じた。
「この証拠が揃えば、警察の捜査課をかせます。業務横領だけでなく、詐欺、そして殺、あるいは過失運転致の容疑で、を即座に逮捕させることができる。々としても、直ちに被害届を提する用があります」
「待ってください」
私は静かに首を横に振った。
「逮捕されるに、ひとつだけ、確認したいことがあります」
私はバッグの奥から、もうひとつの類を取りした。 敏之のキャビネットから見つけした、あの『産価格査定』。 そして、彼が勝にめている、あのの売却計画。
「敏之は、今私たちがんでいる継所の敷――あのプレハブのを、千百万円で売却しようとしています。そのでしいマンションを買い、義母を奥の無認施設に捨て、私を無文で追いす算段です。……敏之は、あのが『自分の名義だ』と信じ込んでいます」
私は沢田弁護士の目をまっすぐに見つめた。
「あのは、売れるのですか?」
私の問いに、田会がく、いため息をついた。