"毒を運ばされていた私" 第4話
清原はの郵便物を盗み見ている。 それだけではない。 先週、自治会の共用廊の修繕費の積通帳を管理していた崎さんが急した際、 遺品のから通帳が消えたと騒ぎになった。 あの、番最初に部へ駆け込んだのは清原だった。 あの女は、寄りのないのを待っている』
。
『区役所の福祉課へ相談にったが、証拠がないと追い返された。 隣の妄癖だと処理された。 清原はでは「親切な母さん」を通している。 誰も私の言うことを信じない。 だが私は見た。あの女が夜、階段の踊りで、の部の表札を指でなぞりながら、 何かをブツブツと呟いていたのを』
息が苦しくなった。 事務所のの油ストーブの気が、急激にえ込んでいくようにじられた。
相馬さんは、団ので孤していた。 気難しい性格で、隣ともほとんど交流がなく、彼がくなったも、自治会の々は「気難しいだったから、で逝ってしまってに」と形式な同をにするだけだった。 私も、彼をし偏屈な老だとい込んでいた。
だが、ノートにかれている内容は、妄の産物とはえないほど具体で、徹な観察記録だった。
私は震える指で、最のページをめくった。
相馬さんがくなる、の付だった。
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昭。
文字は乱れ、面には何かをこぼしたような茶い染みが広がっていた。
『清原が部にやってきた。 「お茶をんで、し落ち着いてください」と、 干した野を煎じたという黄い茶を持ってきやがった。 気の悪い女だ。追い返そうとしたが、玄関の敷居にを挟んで引かない。
仕方なく茶を受け取り、だけをつけたが、ひどく苦い。 薬のような、胃の奥が縮みがるような苦だ。
あの女、帰り際に私の顔をじっと見つめてこう言った。 「相馬さん、余計な調べ物は臓に毒ですよ」と。
あの女はっている。 私が、あの女が昔の夫の保険と公団の権利をどうやってに入れたか、 その謄本の写しをどこに隠しているかを嗅ぎ回っていたことを。
今夜、悸が止まらない。 胸の奥が、氷を押し当てられたようにたい。 体が、鉛のようにくて指本かない。 清原が持ってきた、あのは――』
そこで、記は途切れていた。
乱暴に引かれたインクの線が、ページの端に向かって、まるで識を失いながらペンを滑らせたかのように、く、斜めに伸びていた。
のに残された、未封の量の圧剤。 そして、相馬さんの最の記述。
私の脳裏に、の景が鮮に蘇った。 畳のに転がっていた、清原さんの湯呑み。 にび散った、黄の液体。
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そして今朝、たくなっていた清原さんの傍らにあったのも、全く同じ、濁った黄の茶だった。
清原フミは何者だったのか。 そして、にんだ相馬栄造の命を奪ったものは、本当に「急性筋梗塞」だったのか。
片を握りしめる私の指先から、血の気が完全に引いていた。
架の倉庫管理事務所をた瞬、ぬるいのが頬を打った。 だが、私の背にはじっとりとたい汗が張り付いていた。
提げ鞄のに収めた、埃臭いブリキ缶。 歩くたびに、で真鍮の鍵と分い学ノートが、ゴト、ゴトと鈍い音をてて腰骨に当たる。 それがまるで、んだ相馬栄造の骨そのものを抱えて歩いているような錯覚を起こさせた。
『清原が部にやってきた』 『干した野を煎じたという黄い茶を持ってきやがった』 『あの女は、寄りのないのを待っている』
記の最のページ、斜めに引きちぎられたような万の跡が、網膜の裏側に焼きついてれない。
。 相馬さんがくなったあの、私は確かにあの現にいた。 当歳だった私は、介護事務所に入職してまだヶ目だった。 初めて受け持った単男性の利用者。 気難しく、いつも眉にい皺を刻み、部に入ろうとする私を睨みつけていた相馬さん。
あの、鍵を使って部に入った、相馬さんは呂で倒れていた。
湯の縁にを預け、目を剥いて直していた。