みかん小説
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"毒を運ばされていた私" 第9話

季の入った作業着のから、老鏡を先に乗せている。

「……いらっしゃい」

「松永さんでしょうか。元、宿署の」

松永は鏡の奥の細い目をわずかに見いた。 その線が、私の着古したナイロンジャケットと、胸元に差したままの介護職員用のボールペンに止まる。

「……警察のじゃないな。何の用だ」

、都営桜川団くなった、相馬栄造さんの件でお話しがあります」

松永の表が、瞬で凍りついた。 古を束ねていたビニール紐を握る指が、微かに震える。

「……あんた、あのの若いヘルパーか」

番の札を「準備」に裏返し、松永はの奥の畳半のがりに私を通した。 油ストーブのでやかんがく鳴っている。 私は提げ鞄から、あのブリキ缶と、昨夜から引きずりしたビスケット缶を畳のに並べた。

を広げるにつれて、松永の呼吸が次第に荒くなっていくのが分かった。 相馬栄造の記。未封の圧剤。 そして、神崎医師の自き。

松永は老鏡を押しげ、黄く変した処方箋の裏のメモを、い入るように見つめた。 その顔のい皺が、りと悔で歪んでいく。

「……やっぱりそうだったのか」

松永はく、絞りすような声で呟いた。

「当も、俺は検官に噛みついたんだ。相馬さんの遺体には、筋梗塞特の苦悶の表すぎた。

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まるで、全の力が抜けてそのまま識を放したような顔だった。だが、神崎のジジイが『度の狭症の発作だ』と診断き、自治会も『持病があった』とを揃えた。所轄の幹部も、事件性のない孤独として処理を急ぎたがった。……俺の違じゃ、解剖に回すことすらできなかったんだ」

松永は拳を畳に叩きつけた。 やかんの蓋がカタカタと音をてる。

「松永さん、このメモにかれている薬品と植物……これは何をしているんですか」

「ジギタリスは、ジゴキシンという薬の原料だ。適量なら全の治療薬だが、過剰摂取すればを引き起こす猛毒になる。……だが、それだけじゃない」

松永は記の端に挟まれていた、量の未封の圧剤を指差した。

「カルシウム拮抗剤だ。血圧の患者にに処方される薬だが、ジギタリスと同量に体内に入ると、臓の気信号を伝える『結節』が完全にブロックされる。激しい胸の痛みを伴わず、徐々に脈が遅くなり、血圧が急して、最は眠るように止に至る。……解剖して血液の精密検査をしなければ、急性全やヒートショックと見分けがつかない」

背筋を氷の刃で撫でられたような覚がった。

「相馬さんは、自分が処方されていた圧剤をんでいなかった。

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記によれば、薬の自然な苦に気づいて、むのをやめて溜め込んでいたんだ。だから、清原はを焼いた。薬で殺せないならと、直接あの野を煮した茶をませたんだ」

「清原フミは……体何者なんですか? ただの活保護の老じゃない。なぜ、こんな劇薬の識を」

松永はがり、奥の棚から古い学ノートを取りしてきた。 表には『私捜査覚』とかれている。

「俺は退職したも、あの団のことをずっと調べていた。清原フミという女の過をな」

松永がめくったページには、昭代からの戸籍謄本のコピーが貼られていた。

「清原フミ。旧姓は坂井。彼女は最初から京のじゃない。昭、神奈川県の営団宅で最初の夫と暮らしていた。その夫は、結婚してわずかに、自宅の炬燵の全で急している。当歳だった。、団の名義とわずかな保険はすべてフミに渡った」

息が止まりそうになる。

「それだけじゃない。昭、今度は千葉の公団宅で、フミと同居していた内縁の男が、やはり全で。男の親族と遺産を巡って裁判汰になりかけたが、男が残したとされる自の遺言と、かかりつけ医の診断によって、フミが全額を相続した。……そして昭代初、彼女は名を変え、何わぬ顔であの都営桜川団に紛れ込んできた」

「そんな……じゃあ、あの団に来るからずっと」

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