"毒を運ばされていた私" 第11話
しかも、成分の比率が絶妙に調されてる。急激なショックじゃなく、徐々に血圧ががって昏するように仕組まれてるの。……こんな処方、素にできるはずがないわ」
「……やっぱり」
喉がカラカラに干からびていた。
「でもね、咲子。もっと奇妙なことがあるの」
友は、分析結果のグラフの部にきされた、別のメモを指差した。
「この茶葉、湯で抽された形跡があるんだけど……成分の溶パターンから見て、度に量に煮したものじゃない。ティーポット程度のさな器で、毎回、決められた温度――おそらく度のお湯で、正確に分蒸らして抽されてる」
「……え?」
「い湯だと、毒性成分が分解して効果が落ちるのよ。逆にぬるいと抽されない。度のお湯で分。それが番、この毒物の致効果をめる条件なの。……このお茶を淹れていたは、そのことを完全に熟していたはずよ」
ので、何かが音をてて砕け散った。
度のお湯。 分。
『咲子さん、お湯は沸騰してから、しだけましてね。急須の蓋をして、柱計の針がつむまで待つのよ。それが番、体に染み渡るんだから』
。 私は、清原さんに言われるがまま、やかんのお湯を湯ましし、正確に分を測って、あの黄の液体を急須から注いでいた。
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毎回。欠かさず。
友の声が、遥かくの底から響いてくるように聞こえた。
「この処方、にくなった相馬栄造っていう患者のカルテの処方履歴と、恐ろしいほど致してるわ。当の主治医は神崎医院……相馬さんは、この毒のお茶をまされて殺されたのよ。咲子、最にそのお茶を相馬さんに渡したのは誰なの? 誰が、その温度とを正確に守って、相馬さんにませたの?」
友の問いかけが、私の咽喉元にたい刃のように突き刺さる。
私の脳裏に、に封印されていた、あまりにも残酷な「あの夜」の記憶の扉が、音をててこうとしていた。
学病院のからへといた、は夕に沈みかけていた。 たいが、湿ったアスファルトの匂いとともに私の頬を切り裂く。 だが、その寒さすら皮膚の表面を滑り落ちていくだけで、私の内側は完全に凍りついていた。
『度のお湯で分。それが番、この毒物の致効果をめる条件なの』
友の声が、の奥で鳴りのように反響し続けていた。
のに、押し殺していたの景が、濁流のように溢れしてきた。 それは「記憶の再」などという易しいものではなかった。 かつて自分が親切だと信じ込んでいた常の所作が、枚ずつ皮を剥がされ、そのから黒ずんだ悪の骨組みを剥きしにしていくような惨劇だった。
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の。 介護事務所に入職してまだヶらずの私は、利用者の嫌を取ることだけに必だった。 頑固で偏屈な相馬栄造さんは、の私の挨拶すら無し、部に入るたびに舌打ちをした。 そんな私を、階の清原フミさんはいつも縁側のような廊で呼び止め、優しく抱きとめてくれたのだ。
「咲子さん、相馬さんはね、素直になれないだけなのよ。あの、夜になると胸が苦しくて眠れないって言ってたわ」
あのの夕暮れ。 暗い台所で、清原さんは湯気のつ瓶から、琥珀の液体をい魔法瓶に丁寧に注いでいた。
『これ、私の田舎から送ってもらった薬茶。咲子さん、沸かしたてのお湯じゃ駄目よ。しましてから、ゆっくり分蒸らしてあるの。……あなたが持っていってあげたら、きっとんでんでくれるわ。私が持っていくと、あの、を張って突っ返すから』
清原さんは、私のエプロンのポケットに、温かい魔法瓶をそっと滑り込ませた。 そのの彼女の差し。 慈に満ちた、まるで来の悪い子供を案じる母親のような瞳。
私は、その温もりに縋るようにして、階の相馬さんの部のドアを叩いたのだ。
『相馬さん、お茶をお持ちしました。清原さんから預かった、体にいいお茶です』
最初は追い返そうとした相馬さんだったが、おどおどとをげる私の若い顔を見て、い溜め息をつきながらドアをしだけけた。