"毒を運ばされていた私" 第12話
そして、私が渡した魔法瓶を受け取った。
あの、相馬さんが記にき残した、最の言葉。
『清原が部にやってきた』
相馬さんは、あの茶の背に清原フミの図を見ていた。 だが、実際にその毒を、適温で抽し、めないうちに彼の喉元へと運んだのは――。
私だった。
私は、歩の真んでち尽くし、両でを覆った。 激しい嘔吐が胃の底からせりがってくる。 吐きそうとしても、胃液の酸っぱい苦しか喉を焼かない。
私は、介護職としてを助けていたのではない。 清原フミという怪物が放った、最も無邪気で、最も疑われない凶器だったのだ。
携帯話の源を入れると、同に数件の着信通が崩のように画面を埋め尽くした。 事務所の所、自治会、そして――見覚えのない固定話の番号。
私は震える指で、その固定話の番号を押し戻した。
『もしもし、咲子さんか!』
松永の声だった。焦燥に満ちた、押し殺した鳴り声。
「松永さん……」
『どこにいる! 今すぐ桜川団に戻れ! 神崎の野郎、医院を畳んで逃げる気だ!』
「逃げる……?」
『俺が過の変者リストを持って団に向かったら、医院のに軽トラックが止まっててな。神崎がカルテの束をダンボールに詰め込んで運びしてる最だった! 俺が止めに入ったら、あの野郎、を急発させて逃げやがった!』
受話器の向こうから、激しいの音とサイレンの反響が聞こえてくる。
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『神崎の医院の奥から、量の眠薬と、清原フミの部の鍵が見つかった! 警察もいた。だが、それだけじゃない……区役所の解体業者だ。神崎と自治会が結託して、清原の部の内部解体と遺品処分を、予定より倒しにして今夜しようとしてる!』
「なんですって……!?」
『証拠隠滅だ! 清原の部に残された痕跡を、全部産業廃棄物として砕する気だ! く来い!』
私はタクシーを拾い、団へと急がせた。 窓を流れるの灯りが、引き伸ばされたの帯となって界を歪める。
胸ポケットに忍ばせた、学病院の分析結果の用が、臓の鼓にわせてカサリと鳴る。 もう戻りはできない。 職を失うとか、が終わるとか、そんな恐怖はすでに消え失せていた。 自分ので渡してしまった命のみに、息が詰まりそうだった。
桜川団の入にタクシーが滑り込んだ、敷内は異様な気と埃に包まれていた。
棟のに、型の廃棄物収集トラックが台横付けされている。 作業を着た数の男たちが、〇号――清原さんの部から、畳や古びた箪笥、布団を次々と運びし、荷台へと放り投げていた。 バリバリ、と材がへし折られる乾いた音が、団のに無残に響く。
トラックの脇で、腕を組みながら作業を指図していたのは、自治会の男だった。
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その傍らには、所轄署のパトカーが台止まり、若い警官が困惑した表で無線を握りしめている。
「やめろ! 作業を止めろ!」
混みをかき分けてびしたのは、松永だった。 息を切らし、警察帳の代わりに古い分証を振りかざしている。
「この部は殺事件の現だ! 証拠隠滅で現犯逮捕するぞ!」
「何言ってんだ、この引退した老いぼれが!」
自治会が唾をばして鳴り返した。
「ここは都の管轄だ! 孤独がた部を清掃して原状回復するのは区の正式な業務委託だぞ! 寄りもないババアのゴミを処分して何が悪い!」
「相馬栄造の因だ!」
私は叫んでいた。 自分でも驚くほど、裂けるような声だった。
集まっていた野次馬のたちが、斉に私を振り返る。 自治会の顔が、灯の暗いので引きつった。
私はにトラックのへとみた。 鞄から、あのブリキ缶、から引きずりしたビスケット缶、そして分析結果の用を叩きつけるようにアスファルトのに並べた。
「相馬栄造さんは、病じゃない! 清原フミと神崎医師に毒殺されたのよ!」
周囲の空気が、瞬で凍りついた。 ベランダから顔をしていたたちの囁き声が、潮が引くように止まる。
「な……何を馬鹿なことを!」
自治会が私の腕を掴もうとを伸ばしたが、松永がその巨体で割り込み、男の胸倉を突きばした。