"消された母親の席" 第2話
『聖マリアンナ記・周産期医療センター 自費特別処置・産児集管理控』
聖マリアンナ?
私の臓が、トクンと規則なね方をした。
葵を産んだのは、修平の実くにある寂れた公の民病院だったはずだ。妊娠週、激しい腹痛に襲われ、緊急搬送された先で識を失い、目覚めたときにはすでに保育器のに葵がいた。方の暗い分べんの記憶しかない私にとって、都内の超等に聳えつセレブ御用達の聖マリアンナなど、縁もゆかりもない所だった。
なぜ、そんな病院の領収が、葵のお受験用スーツの芯に隠されているのか。
品者がの持ち主の私物を抜き忘れただけだろうか。いや、このスーツは完全な未着用・タグ付きのデッドストックとして品されていたものだ。しかも、肩パッドの内側など、製造程で図に仕込まない限り入り込むはずがない。
私は震えるで、くなったつ折りのをいた。
の青いインクはかすれていたが、印字された項目は酷なまでに鮮だった。
【患者氏名】:条 綾 【】:昭 【処置】:平成 午分 【処置内容】:超緊急帝王切術(胎児能全)/児特定集治療(NICU)緊急収容 【胎児性別】:女児(体:1,420g) 【自費支払総額】:3,850,000円(即全額決済済)
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の奥で、キーンという鋭い鳴りが始まった。
平成。午分。
——それは、私が葵を産んだとされると、分単位まで完全に致していた。
「嘘でしょう……?」
乾いた喉から、擦れた声がた。
偶然だ。そんなはずはない。同じの同じ刻に、別の病院で子供が産まれることなど、確率としてはあり得る。だが、なぜ患者名が「条綾」なのか。
そして、私の線は、領収の番に設けられた、極の備考欄へと吸い寄せられた。
ボールペンのきで、殴りきのような文字が残されていた。
【緊急族連絡先】:090-3481-XXXX
を持つ私の両が、激しく打ち震え始めた。
その話番号を、私は見違うはずがなかった。
それは修平の携帯番号だった。だが、彼が学や保護者に配っている名刺に刷られた公用の番号ではない。彼が「教職員組のトラブル処理専用のサブ端末だ」と言い張り、暗証番号をかけ、夜になっても決して私のでは着信画面を見せようとしなかった、あの黒いスマートフォンの番号だった。
「修平……?」
呼吸が浅くなる。たい空気が気管を通り、肺の奥が凍りつくように痛む。
私はちがり、壁際のカラーボックスへ駆け寄った。
乱雑に突っ込まれた類ファイルを引き抜き、番奥からプラスチックケースを取りす。には、私が切に保管してきた葵の『母子健康帳』が入っていた。
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表の角は擦り切れ、私が葵の成を願って貼ったフェルトのウサギのアップリケが毛羽っている。
震える指でページをめくる。
『産の状態』のページ。
:平成、午分。 体:1,420グラム。 産所:緑川総病院。
そこまでは、私の記憶通りだった。だが、ページの、分べんを取り扱った医師の署名捺印欄に目を凝らした瞬、私は胃の底からせりがってくる烈な嘔吐に襲われた。
蛍灯の青いに透かすと、医師の認印の朱肉の周囲に、自然な滲みがあった。
違う。滲みではない。
それは、度押された別の印鑑のから、と同じの修正液を極めてく塗布し、そのにまったく同じ名字のゴム印をねて偽造した痕跡だった。
爪の先でカリカリと擦ると、劣化した修正液のがパラパラと剥がれ落ちた。
から現れたのは、さな、だが極めて瞭な病院コードだった。
『SM-NICU-04』
聖マリアンナ・児特定集治療。
が、ぐにゃりと歪んだ気がした。
私はそのにへたり込み、母子帳を胸に抱きしめたまま、荒い息を繰り返した。
葵は、私が産んだ子ではない?
じゃあ、あのの夜、帝王切の麻酔から覚めた私に、やつれきった顔で「よく頑張ったね、未熟児だけど女の子が無事に産まれたよ」
と涙を流して微笑んだ修平は、体誰の子供を抱いていたのか。