"消された母親の席" 第23話
おに……ううん、ホテルへこうね」
葵の柔らかい髪を撫でながら、私は警察署の窓で返還された押収品のリストに目を落とした。
慶の理事の庫、そして条の本邸から押収された、膨な類の。 公文偽造、印私文偽造・同使、詐欺未遂、そしての自事故に関する保護責任者遺棄致未遂の証拠類。
だが、リストの末尾に記載されていた点の証拠品の名に、私の指先が凍りついた。
『平成付・特別信託契約証原本(被証:信吾)』
——?
「藤先輩、これ……」
私が震えるでリストを指差すと、先輩は鏡を押しげ、々しく頷いた。
「取調の担当検事から、予備な事聴取の内容を聞いた。真奈美……おがっている以に、この事件の根はいぞ」
先輩は枚のコピーを、ブリーフケースから取りして私に渡した。 に作成された、条の当主——綾の父親の遺言信託の契約だった。 そこには、由紀氏が排除されたに備え、条の裏資産億円を、ある物に信託して保護させるという条項が記されていた。
そして、その信託受託者の欄。 達な毛の文字で、誇らしげに記されていた署名捺印。
『受託者: 信吾』
私の実の父親の名だった。
「どうして……お父さんが、もから……?」
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「信吾さんはただの仕てじゃなかったんだ」先輩はく言った。「当主の最も信頼する腹であり、由紀氏の実質な見だった。そして、ここからが本丸だ。警察が押収した聖マリアンナの産科カルテの原本……その真実が、さっき完全に解読された」
「真実……?」
先輩はを噤み、私の目を真っ直ぐに見つめた。その瞳には、言いようのない痛ましさと、戦慄が混ざりっていた。
「真奈美、今すぐ御殿の県総病院へくぞ。由紀氏が、さっき未認施設からそこへ緊急移送された。おが直接、あのから聞くべきだ」
*
名速を再びへる内は、異様な静けさに包まれていた。 部座席で、葵は疲脈しきって眠りに落ちていた。さな胸が、規則正しくしている。
御殿の県病院の特別病棟は、あの暗い『希望の』の牢とは対照に、柔らかな朝のが差し込んでいた。 ナースステーションを通り抜け、案内された個のドアを静かにける。
清潔ないシーツのに、由紀さんが横たわっていた。 酸素マスクはされ、点滴のチューブが本だけ腕に繋がれている。彼女の顔はまだ蒼だったが、その瞳からは、あの牢で見た狂気のような濁りが消えり、静かでいが宿っていた。
「真奈美さん……」
由紀さんが々しく唇をかした。
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私は葵のを引いたまま、ベッドの脇へ歩み寄った。
「由紀さん、体は丈夫なんですか」
「ええ……ぶりに、本物の太陽を見たわ。窓から富士が見えるのね。こんなに綺麗な景を、私はも忘れていた……」
由紀さんはさく微笑み、それから私の隣につ葵へと線を移した。 その瞬、由紀さんの目から、堰を切ったように涙が溢れした。
「葵ちゃん……よく無事で……」
「由紀さん」私はベッドの柵にを取り、核を問いかけた。「教えてください。私の父は何をしていたんですか。そして、葵は……葵は本当に、綾と修平の子供なんですか?」
由紀さんは首を横に振った。々しく、だが決定な否定だった。
「違うわ、真奈美さん。綾はね、あなたを精神に完全に破壊して、抵抗する力を奪うために、最悪の嘘をついたのよ」
「……え?」
私の呼吸が、喉の奥で止まった。
「の、聖マリアンナの周産期センターで何が起きたか……信吾さんから預かっていた私の記と、警察が押収した本物のカルテに、すべてが記録されているわ」
由紀さんは震えるを伸ばし、私の首の『鳥のあざ』をそっと指差した。
「、私が箱根で崖から突き落とされた、私のお腹には宿っていた命があったの。信吾さんとのにできた子供よ」
ので、鳴が轟いたような衝撃がった。
父と……由紀さんが?
「信吾さんは、私の父の専属職として条に入りするうちに、孤独だった私をくしてくれた。でも分違いの恋だったわ。