"消された母親の席" 第24話
条のを継ぐ私と、町の仕て。私たちは密かにを育み、私は信吾さんの子を籠った。それをった綾と修平が、財産と位を奪うために、私をごと崖へ落としたのよ」
由紀さんは涙を拭おうともせず、井を見げた。
「私は半随になったけれど、お腹の子供は奇跡に助かった。超未熟児として産み落とされた男の子……それが、昂(こう)よ」
昂くん……。 あの子の首にあった、あの鳥の形のあざ。 あれは、私の父の血筋——つまり、私の異母弟だったのだ。
「綾は当、名病院の院との政略結婚が決まっていた。でも彼女は妊症だった。条の跡取りを産めなければ、彼女のは危うかったの。だから綾は、識だった私の赤ん坊を奪い、自分が産んだ子として偽装したのよ。信吾さんは昂を取り戻そうとしたけれど、条の権力と、修平の父親の卑劣な脅迫によって、をせなかった……」
「じゃあ……葵は? 葵は体誰の子なの!?」
私の叫びに、由紀さんは私の両を、そのやせ細ったで包み込んだ。
「葵ちゃんはね、真奈美さん……あなたと、修平の子供よ」
病の空気が、完全に止まった。
「……私の?」
「そうよ。、あなたが方の病院で帝王切を受けた、綾もまた、修平との倫関係のでできた子供を、聖マリアンナで極秘に産していたの。
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でもね、綾の産んだ赤ん坊は、度の先性疾患で、産声をげることなく息を引き取ったわ」
由紀さんの言葉が、文字ずつ、私の胸に染み込んでいく。
「綾は狂乱した。倫の末に産したとなれば、夫からも条からも追放される。そこで修平が提案したのよ。同じに、方の病院で緊急産した、あなたの赤ん坊を奪おうって」
「奪う……?」
「修平は方病院の医師を買収し、あなたの産んだ元気な女の子を『度の仮状態で度医療が必だ』と偽って、聖マリアンナへ緊急搬送させた。そして、識の戻らないあなたには『産だった』と告げ、綾のんだ赤ん坊の葬許証を突きつけたのよ」
目のが、真っになった。
あのの夜。 麻酔から覚めた私に、やつれきった顔で「残だった、子供は助からなかった」と涙を流した修平。 たくなったさな骨壺を抱きしめて、声をげて泣き崩れた私の背をさすっていた、あの男の。
すべてが、私の子供を奪うための、悪魔の詐術だったのだ。
「でも、完全犯罪にはならなかった」
由紀さんは静かに続けた。
「信吾さんが、異変に気づいたのよ。仕ての仕事を通じて聖マリアンナの納入業者と繋がりがあった信吾さんは、綾が産したはずなのに、なぜか健康な女児を抱いて退院したことを突き止めた。
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信吾さんは修平の元へ鳴り込み、警察へくと迫ったわ」
「お父さんが……」
「修平は震えがった。学園をクビになり、実刑を受けることを恐れたあいつは、綾と結託して信吾さんを脅迫した。『警察へけば、おが隠している由紀の居所をバラし、由紀を本当に殺す。だが、もし真奈美にその赤ん坊を返して育てさせるなら、見逃してやる』とね」
「だから……」私の喉から、血を吐くような嗚咽が漏れた。「だから、あの子は私の元へ戻ってきたの……?」
「そうよ。信吾さんは、する娘であるあなたに、自分ので実のが子を育てさせようとした。でも、真実を話せば、あなたが修平や条の報復に怯えてを過ごすことになる。だから信吾さんは、すべてを胸にしまって病魔と闘いながら、あの真鍮の鍵をあなたに託したのよ」
由紀さんは、私の隣で呆然とち尽くしている葵の頬に、優しくを触れた。
「葵ちゃんはね、最初から、秒たりともの子供だったことなんてないわ。あなたが命を削って産み、、血を吐くようないで守り育ててきた、あなた自のたったの娘なのよ」
「あ……ああああっ……!」
私は膝から崩れ落ち、葵のさな体を抱きしめた。
胸の奥底で、にわたって私を苛み続けてきた黒い呪縛が、音をてて々に砕け散っていった。
私は、夫の浮気相の子供を育てていたのではなかった。 私のした子は、の代わりなどではなかった。
あの、私の胎内から産まれ、私の母乳をみ、私の腕ので初めて笑った、私のかけがえのないが子だったのだ。