"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第4話
まだだった。ぶらだった。いつも持っている黒いカバンがない。
「どうしたの?」
「カバン、に置いてきた」
夫は着も脱がずに座卓のに座った。私は台所で噌汁を温めていた。振り返ると、夫は座卓のに茶い封筒を置いていた。私はその封筒を見た。役所の窓でもらうあのい茶だった。
「婚しよう」
私はお玉を持ったままっていた。何かの聞き違いだとった。冗談を言うではないし、そもそも冗談の言い方をらないだった。
「何?」
「婚しよう。もういてある」
夫は封筒から用をした。夫の欄はすでに埋まっていた。名もハンコも証の欄も、私の欄だけがかった。
私はを止めて座卓のに座った。がたくなっていくのが分かった。
「なんで?」
「理由はない」
「あるでしょう」
「ない」
夫は座卓の目を見ていた。私の顔は見なかった。私はいつく限りのことを聞いた。私が何かしたのか、誰か好きなができたのか、仕事で何かあったのか、お父さんのことなのか、体が悪いのか。夫は最初のつには首を振り、のつには何も答えなかった。
「答えてよ。嫌いになったならちゃんと言って」
そのだけ夫の顔がいた。眉のに瞬だけいシワが寄って、が半分いた。何かを言おうとしたのだとうけれど、夫はを閉じた。
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そして、よりい声でこう言った。
「もう俺に関わるな」
その言で私のの何かが折れた。私は泣いた。座卓の角を掴んで、みっともないくらい声をして泣いた。緒に暮らしたのであんな泣き方をしたのは初めてだった。
夫はかなかった。を伸ばしもしなかったし、席をちもしなかった。目を見ていた。どれくらいそうしていたのか分からない。気がついたら噌汁がえていた。私は用を引き寄せて自分の欄を埋めた。字が震えて、名の最の1画がねてしまった。き直そうとったけれど、き直すはなかった。ハンコを押した、夫がさく息を吐いたのが聞こえた。
泣き止んだ、夫はちがって台所へった。何をするのかとったら、めた噌汁をにかけていた。夫はそれを椀によそって、卓に戻ってでんだ。私の分はよそらなかった。み終わると椀を流しに持ってって自分で洗って伏せた。の、夫が茶碗を洗ったのは数えるほどしかなかった。私はその背を見ていた。何か言おうとして言葉がてこなかった。になってえば、あれが私たちの最の事だった。
それから私は荷物をまとめた。夜のうちに全部は無理だったから、まず着るものだけをカバンに詰めた。夫は隣の部でっていた。
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伝おうとはしなかった。私が玄関で靴を履いていると、夫がろから来た。そして何かを差しした。枚のカードだった。
私はそれを見て、それから夫を見た。夫は私の顔ではなく、玄関の叩きの点を見ていた。
「これで最だ。暗証番号は0427」
私は息をんだ。そのつの数字が何なのか、私にはすぐに分かった。分かってしまったからなおさらが分からなかった。
「0427って、私たちの入籍じゃない……」
夫は何も言わなかった。
「なんで今その番号を使うの?」
「覚えてるなら使える。それだけだ」
「そんな言い方しないでよ」
「使いたければ使えばいい」
夫はそう言うと、私のにカードを押し付けた。押し付けるという言い方は正確ではないかもしれない。夫は私ののひらにそれを置いて、自分の指を閉じさせただけだ。ほんの瞬、夫の指が私の指に触れた。たい指だった。その、夫は歩がって廊の暗がりに入ってしまった。
私は玄関にったまま、その暗がりに向かって言った。
「ひどいだね」
返事はなかった。私はドアをけてにた。の夜のが首に入ってきた。階段をりて、振り返らずに歩いた。角を曲がるまで振り返らないと決めていた。それだけがそのの私に残っていただった。
角を曲がってから、私はそこでを止めた。のひらをいた。
カードがあった。青とのなカードで、隅に「瀬みつき」と印字されていた。その名はあと数で消える名だった。