"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第7話
「私ね、いつか自分でこういうをやりたいの」
「?」
「うん。きくなくていいの。カウンターがつくらいで。泣きたいにで来られる」
自分でもっていた以にはっきりした言い方になった。言ってから恥ずかしくなって、私はけした。
「バカみたいだよね」
夫はコーヒーをみ干してカップを置いてから言った。
「見つけやすいだな」
それだけだった。褒めてもいないし、応援するとも言わない。でも私はその言が嬉しかった。このは笑わなかった。それで分だった。
入籍した次の週に、夫は半の休みを取って私をへ連れてった。縦野町の央の支だ。平の午でロビーは空いていた。番号札を取って私たちは子に並んで座った。夫は仕事のままだった。会社を抜けてきたのだとその分かった。
呼ばれて窓へくと、夫は私の方へ類を押しやった。
「座作れ」
「あるよ、料の座」
「そっちじゃない」
夫は言い直した。「のを貯める座」
私は夫の顔を見た。夫は窓の職員の方を見ていた。
その、私の名でしい普通預の座ができた。夫は着の内ポケットから財布をして万円を入れた。暗証番号を入力するさな械が渡された、私は指を止めた。
「番号何にする?」
「決まってるだろ」
「決まってないよ」
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「今から数えて番忘れない」
私は「0427」と打ち込んだ。夫は画面を見ずに頷いた。通帳とカードは夫が受け取って、そのまま自分のカバンに入れた。
「私の座なのに」
「使うなよ。貯める座だ」
私は笑って「はいはい」と言った。その、私はその座のことをすぐに忘れてしまった。忘れてしまうくらい当たりの活が続くとっていたのだ。
結婚したに、私は会社を辞めた。やめたくてやめたわけではない。会社が事務所を隣の件へ移すことになって、通えなくなったのだ。夫は「いい会だからし休め」と言った。私もそのつもりだった。半もすればまた働くだろうとっていた。その半がになるとはっていなかった。
しいでパートをいくつか受けた。決まったこともあるけれど、くは続かなかった。夫の仕事は朝がくて夜が遅い。曜に急な納品が入ることもある。私が夕方から働きにると、の回りが回らなくなった。夫は文句を言わなかった。ただ私がパートをやめたの晩に、「わるかったな」とだけ言った。
「なんであなたが謝るの?」
「いや、そういう……」
やり取りを何度かして、私はそのうち探すのをやめた。
初めの数はの話をよくしていた。休みのにを歩いていて舗を見つけると、私たちはを止めてを覗いた。
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夫は産の張りの賃を見て「これはい。これなら……」などと言った。私はカウンターを何席にするかを考えた。に取りを描いたこともある。
「窓のところにの席を作りたいの」
「用か」
「うん。誰とも喋らなくていい席」
「なるほどな」
夫はそういういつもく相槌を打った。分かっているのか分かっていないのかこちらからは見えない相槌だった。
度だけ本気で見にった物件がある。結婚して目のだった。隣町の商のはずれに「貸舗」のが貼られた古いがあった。は乾物だったらしい。ガラス戸のところに聞が積んであっては暗かった。私たちは曜の午にそこへった。産に頼んだわけではないのでから見るだけだ。
「奥がったよりいね」
「いや、あれは倉庫だな。使えない」
「詳しいね」
「うちのと同じ作りだ」
夫はガラスに額体をつけてを覗いていた。そのうちにいてある話番号を携帯に打ち込み始めた。私は慌てて止めた。
「まだそんな段階じゃないでしょ」
「番号だけだ」
「番号だけでも困る」
私は笑いながら夫の腕を引いた。そのはそれで帰った。帰り、夫がぽつりと言った。
「あと何か経ったら、こういうのを本気で見るか」
「何か?」
「か」
「私、その頃だよ」
「ちょうどいいだろ」
私はその言葉をそのは軽く聞き流した。今になってえば、あのはあのから数えていたのかもしれない。
その頃私は台所でよくコーヒーを入れていた。