"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第8話
豆を買ってきてミルで引いて、を測って落とす。うまくいった、そうでないがある。夫は毎回同じことしか言わなかった。
「うん、うまい」
「今のは失敗してるよ」
「そうか」
そう言ってまたむ。私はその適当さに腹をてるふりをして、内では笑っていた。
結婚して目のにお父さんがを畳んだ。きな取引先が別の会社に発注を変えたのだと聞いた。現さんの体もその頃にはもう良くなかった。械を売って建物をけ渡して、それでもりない分が借として残った。
いくら残ったのかを私はらない。私が聞いても夫は言わなかった。
「私、働きにるよ」
「いい」
「良くないでしょ。親父の借だろ」
「俺のだ。うちの活とは別だ」
夫はそう言い切ってそれ以は話さなかった。返済のことはすべて夫の座で処理していたので、計を預かっていた私にも通帳のは見えなかった。毎の活費はと同じ額を渡された。私はその額が変わらないかえって落ち着かないものをじていた。
夫はその頃から昼を持ってるようになった。私が作った弁当ではない。夫は自分で握った塩結びをつ聞にくるんでカバンに入れていた。私が作る言っても「いい」というだけだった。夫が台所にって米を握っているのを、私はろから何度も見た。
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がきいから、つがぶ格好にきかった。
現さんはを畳んでにくなった。お母さんはもっとにくなっていたので、夫の内は兄のり介さんだけになった。
葬式の、夫は度も泣かなかった。の待で缶のお茶を持ったまま、ずっと同じ姿勢で座っていた。私はその隣に座っていただけだ。何を言えばいいのか分からなかった。
り介さんというは、夫とはまるで違った。背がくてよく喋って、集まりがあれば必ずのにいる。保険の代理に務めていて、名刺をすぐにす癖があった。
葬式の晩、り介さんは酒をみながら夫にこう言った。
「おなあ、俺は最初から畳めって言ってたんだ。おが途半端に肩入れするからこじれたんだよ」
夫は何も言い返さなかった。ビールの持ったまま、ラベルの端を指でめくっていた。
私がをこうとしたら、夫がでそっと私の膝を抑えた。やめておけということだった。
その晩の帰り、私は歩きながらっていた。
「言い返せばいいのに」
「言い返してどうなる?」
「悔しくないの?」
夫はしばらく黙ってから言った。
「兄貴は兄貴で、親父にを借りてた期がある。言えない側の言い方ってのが、あるんだよ」
私はそれ以何も言えなくなった。あのは内の悪をつも言わないだった。
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その頃から私はの話をしなくなった。理由は単純だ。夫が父親の借を背負っているのに、自分のの話をするのが恥ずかしくなったのだ。
業にはがいる。の話をすれば、夫はきっと何とかしようとする。それが分かっていたから、私はをつぐんだ。
それでも夫は々いしたように聞いてきた。
「あの話、どうなった?」
「あの話って?」
「」
私は笑ってこんなに答えた。
「もう齢にも無理だよ。今の活で分幸せだから」
嘘ではなかった。なくとも半分は本当だった。夫はその度に何も言い返さなかった。「そうか」とか「そうだな」とか言ってテレビの方を向いた。私はそれを興がなくなったのだとっていた。
私たちに子供はできなかった。ほど病院に通った。私の体にも夫の体にも、これといった原因は見つからなかった。原因がないというのが番苦しかった。次はきっと、送り返して……そのうちに私は通うのをやめた。
やめると決めたの夜、夫は台所で洗い物をしながらこう言った。
「でいいだろう」
「うん。だって族だ」
その言い方があまりに器用で、私は流しので泣いた。夫は振り返らなかった。ずっと同じ皿を洗っていた。
今えば、夫は私が泣いているに絶対に顔を見せないだった。あの喫茶のからそうだ。
見ないでいてくれることが優しさなのだと私はずっと信じていたけれど、「見ない」という癖はそのまま「話さない」