"0427の暗証番号が暴く夫の秘密" 第11話
そんな気が胸の底から浮きがってきて、私はカードを握ったまましばらくけなかった。
背の方でスリッパの音がした。振り返ると、の制を着た女性がっていた。私より実際ほどに見えた。そのはまず私のののカードに目を落とした。その瞬に探していたものをやっと見つけたの顔になった。それから私の顔を見て、目の縁を赤くした。
「瀬みつき様でいらっしゃいますね」
私は頷くこともできなかった。に捨てたはずの苗字をらないのから聞いたからだ。
そのは私の正面に回ると、腰から折るようにくをげた。
「奥様、別へどうぞ」
「奥様って……私、もう婚しています」
「じております」
そのは顔をあげてこう言った。
「それでも、ご主様からそうお呼びするようにと伺っておりました」
私のの奥で、自分の臓の音が鳴っていた。「ご主様」という言葉がどうしてもに入ってこない。私にはもう主はいない。にそう決められたのだ。決めたのは私ではないけれど……。
「あの、何かの違いだとうんですけど……」
「違いではございません」
そのはもう度だけくをげてから、片をロビーの奥へ向けた。
「おをしだけいただけますでしょうか?」
「はい」
とは答えていた。自分でも驚くくらい素直な声だった。
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通されたのはロビーの奥の部だった。そんなに広い部ではない。い机と布張りの子が客。壁に額に入った景の絵がかかっていた。窓にはいカーテンが引いてあって、の音がほとんど入ってこない。
私は勧められた子に座った。座ってからコートを脱いでいないことに気づいた。脱ぐ余裕がなかったのだ。
そのは机を挟んだ向かいに座って、名刺をした。
「申し遅れました。わたくし、佐々と申します」
名刺には「央 佐々幸子」といてあった。
「まず、ご本様であることの確認をさせていただいてもよろしいでしょうか。お数ですが、分証をお持ちでしたら――」
私は財布から免許証をした。そこには「朝倉みつき」といてある。佐々さんはそれを両で受け取って、名の欄をしばらく見ていた。
「ありがとうございます。あの……名が違いますよね。座の方はの苗字のままだとうので」
「はい。そのことにつきましては、当ですでに承しております」
「承って?」
佐々さんは顔をあげた。
「順を追ってご説いたします」
佐々さんは机のにい類をして、その番を私のほうへ向けた。
「まず、なぜATMでお取り扱いできなかったのかを先にお伝えします。この座は現、お取引を部制限しております」
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「制限、はる……?」
「ご登録のご所に、当からお送りした郵便物が宛先で戻ってきておりまして、お客様のご所が確認できない状態が続きますと、窓でご本様を確認させていただくまで部のお取引をお止めする決まりになっております。本はこちらの免許証でります。座のお名とのつながりは当の類で確かめております。そので、お名とご所の変更のお届けを枚いていただきます。それでお取引の制限がれます」
私は膝のでを握った。登録の所。それはまでんでいたあの部の所だ。私はこの座のをほとんど忘れていたから、所の変更などしていない。
「あの、それは……いつ頃から?」
「昨のからです」
「……?」
「はい」
佐々さんはそこで度言葉を切った。
「、お待ちしておりました」
その言い方が、事務の説の言い方ではなかった。私は顔をあげてこのの目を見た。目の縁がまた赤くなっていた。
「瀬みつき様、つだけお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「はい」
「このカードの暗証番号を、ご主様からお聞きになっておられますか?」
聞いていた。嫌になるほど覚えていた。忘れようとして忘れられなかったつの数字だ。それでも声にするのは怖かった。あのの玄関の暗さと叩きの点を見ていた夫の目がまぶたの裏に戻ってきた。
――「これで最だ。暗証番号は0427」
、の奥で何度も鳴っていた声だ。