"680億円の取引を救った秘密の多言語" 第8話
「……学の頃から、私はと話すのが極端に苦でした」
会議の静まり返った空ので、私は自分の過をゆっくりと語り始めた。
「発表のスピーチのに声がせなかったことで、クラスではまるで空気のような扱いに……それがきっかけで、と話すこと自体が怖くなったんです」
ふと脳裏に、あの古びた黒板の文字が浮かびがる。――『今のスピーチ』と墨でかれたあのの朝。
「でも、言葉そのものは嫌いになれなかった。話すことは怖くても、言葉をることは楽しかったんです。『この言葉で伝えたら、相にはどう聞こえるんだろう』って、世界の辞をめくるのが好きでした。そんなことをいながら、いつのにかいろんな国の言葉を覚えていて……」
私は度、くきな呼吸をした。
「誰も私のことをらない所なら、もしかしたらちゃんと話せるかもしれない……そうって、学代にモロッコへのボランティア活に、でび込んだんです」
そこには、アラビア語、フランス語、スペイン語、ベルベル語など、種様な々が複雑に混ざりって暮らしていた。その雑踏ので、私のから言葉が自然とあふれてきたのだ。
瞬の静寂の、誰かがさく息を呑む音が聞こえた。それが、私ので初めて「言葉を発することが楽しい」
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とえた瞬だった。
そして、もうつの決定な記憶が蘇る。
あの、同企業説会の暗いブースの隅っこ――就職活のどん底で、瀬さんに声をかけられたあのの記憶だ。
「――君?」
「え、俺ですかさっきのブースの端っこで、ずっと古い資料を読んでいただろう。あの『アラム語』の写本みたいなやつをに見ていた」
「あ、はい……珍しくて、つい……」
「あれが読めるのか?」
「いえ、でも……なんとなくラテン語の構造にそうだったので……」
「ラテン語が分かるのか? じゃあ、あそこの写本はアル=マズリフの方向性についてかれていると読めるのか?」
「はい、おそらく……」
「面い。君、履歴は持っているか?」
ふと、私は現代の現実世界に識を戻した。
あの、瀬さんが私に言ってくれた言葉のが、今なら痛いほどよく分かる。
――「いつか、君の能力が絶対に必なが来る」
それがまさに、この瞬なのだと確信した。
「くん……」
織の声がわずかに震えていた。そこには驚きと、い敬、そして何よりも私を信じてくれていた温かい気持ちが込められていた。
「だから……僕に通訳を続けさせてください」
フランス代表のブランシェ氏が、穏やかな笑みを浮かべながらゆっくりと頷いた。
「ようやく、本当の対話の準備ができたようですね」
織がそっと私の方を見つめ、さく頷いた。
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「くん、ありがとう」
「いえ……僕にできることが、この所でやっと見つかった気がして……」
言葉というものは、かつての私にとっては自分を傷つけるだけの刃物だった。
だが、今は違う。言葉は、ととのを繋ぐ美しい架けになれる。それを、私は今ようやくから信じることができたのだ。
協議は再び、理なペースでき始めた。
「それでは、各代表の皆様より、美術品の保環境に関する懸点についてお聞かせいただけますか?」
「順にご説をいたします。はじめに、イタリア代表のロマーノ氏より――」
ロマーノ氏はこうおっしゃっている。『々の所蔵する文化財が保される施設の気候条件が、美術品の劣化を防ぐために適切であるかどうかを詳しく確認したい』とのことです。
「はい、それについては最の精密温度管理システムを導入しております。お元の資料の19ページをご参照ください」
その説を受け、私はすぐに再び各国語へと正確に変換していく。
「……よって、温はを通じて55から60%に保たれ、湿度も22度を厳にキープしております。ごいただける環境です」
つひとつ丁寧に、展品の持つ文化背景をしっかりと踏まえた表で、失礼のない美しい言葉選びで、誰かの真剣ないをまるでそのの肉声のまま伝えるように掛けた。
織が何度も私に温かい線を向け、満そうに頷いてくれる。その線は、社内で浮きまくっていた「厄介な変わり者」