"680億円の取引を救った秘密の多言語" 第9話
ではなく、チームの信頼できるプロの通訳者としてのものだった。
続いて、チェコ財団からの所蔵目録に関する確認事項へと移る。
「ご指定の目録番号70のC、パルト美術館蔵の商標群について、所権の正式な移期の確化をご希望とのことです」
鬼はというと、すっかり完全に「空気」と化していた。誰も彼を見向きもしない。それどころか、イタリア代表のややかな線がチラリと鬼を捉え、軽蔑の溜息をついたのを私は見逃さなかった。
それが、すべての答えだった。彼の傲で劣な態度が、今のこの失態を引き起こしたのだ。通訳というプロフェッショナルを軽し、文化への敬を侮辱し、百億円という巨な国レベルの取引を文字通り危うくした。そのすべての責任は、目のに縮こまっているこの男にあった。
だが、私は今、暴力でも報復でもなく、もっと気い「正しいやり方」でこのを完全に支配し、取り戻している。
「以が、各国からのご質問とそれに対するバルハルテ側の回答となります。何か追加の確認事項があれば、どうぞご慮なくお申し付けください」
協議は驚くほどスムーズにんでいった。むしろ、理とすら言える最の展だった。
そしてついに、最終の事項である「契約の最終確認」
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の段階に入った。
フランス代表のブランシェ氏が紡いだ言葉をにした瞬、私はわず自分のを疑い、驚きの声を漏らしそうになった。
「えっ……?」
「まらないで……あ、はい」
ブランシェ氏は厳かな顔でこう言っている。
「今回の契約締結に応じる用はある。ただし、つの絶対な条件がある」
「条件……ですか?」
「今も、この若い青・くんを文化な仲介者として、私たちのプロジェクトに継続に関わらせてほしい、とのご希望です」
会議に、再びい沈黙が流れた。
「な……なんだと……!? お、ふざけんな! そんなのあり得ないだろ、それなら営業部である俺が……!」
「ならば、この契約の話はすべてなかったことになりますが、それでもよろしいのですか?」
「なっ……!」
「あなた方は、私たちの言葉や歴史、そして文化を無にしました。そちら側の社内事には関わらず、すべてを英語で無理やり取り繕おうとし、現の通訳たちを靴で踏みにじった。文化を軽く見る者に、これ以切な美術品を託すわけにはいきません」
「それは……!」
ブランシェの徹な瞳が、鬼を真正面から射抜いた。
「あなたが今もこのプロジェクトにしでも関わり続けるのなら、々は契約を切めないとってください」
内の空気がぴたりと凍りついた。
「……そのご希望、んで全面に拝命いたします。
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しおりさん、続きを」
「はい!」
私の胸の奥が、かつてないほどく燃えがった。
――必とされたという確かな実。
初めて、自分の持つ言葉の力で、誰かの役にてたというい。が音をてて豊かに満ちていくのが自分でも分かった。
「くん、本当にありがとう……あなたがいてくれたから、私たちはここまでたどり着けたわ」
「いえ、僕の方こそ……しおりさんが僕の能性を信じてくれたから、こうして声をす勇気がました」
その瞬、いつもは理な織の頬が、ほんのしだけ茜に染まったように見えた。
鬼は、見るも無惨に顔を真っ青にさせながら、すごすごと敗者犬のように会議をうようにしててった。その惨めな背に、誰として声をかける者はいなかった。
歴史成約の署名が厳かに交わされる。
全員がそのでちがり、部に万の拍が盛に湧き起こった。
百億円という途方もない美術取引が、静かに、しかし確かな形で成した歴史な瞬だった。
――学のあの教の教壇ので、言も声がせなかったあのの自分に、今のこの誇らしい俺の姿を見せてやりたいな。
そして、私は自分のの奥底で、ほんのしだけしい誓いをてた。
――これからも、誰かのからの言葉を、正しく、曲げずに、まっすぐに伝えられるでいよう。
成約の成功から数が経過した。社内の空気は、まるで別の会社にまれ変わったかのように変していた。