みかん小説
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"身重の愛人を抱き起こした私" 第3話

流産したくないなら、急ぎなさい」

私の徹な声に気圧されたのか、葵は脂汗を流しながら、必に私の首にしがみついてきた。

玄関をる際、義母がろから甲い声を投げつけてきた。

「由さん! 病院にっても、佐藤の名で勝い処置なんて受けさせないでちょうだいね! まだ籍も入ってない女なんだから、保険証だって自分のを使わせなさいよ!」

振り返りもしなかった。 い玄関ドアを閉めると、え切った夜が頬を打った。 タイミングよく、通りから角を曲がってきた個タクシーのヘッドライトが、アスファルトのく照らしした。

藤総病院の救急来まで。できるだけ急いでください」

運転に告げ、私は部座席に葵を滑り込ませた。 私も隣に乗り込み、ドアを閉める。 の効いた内に、葵の苦悶に満ちた呼気と、たい汗の匂いが充満した。

が滑らかに発する。 葵はシートの体を丸め、お腹を抱えたまま、激しく喘いでいた。 私は自分のバッグからタオルハンカチを取りし、彼女の額に浮き粒の汗を無言で拭った。

「……触らないで」

葵が、掠れた声で拒絶した。 そので、私の腕を々しく払いのけようとする。

「同……なんて、しないでよ……」

「同していません」

私は淡々と答えた。は止めず、彼女のえ切った首筋の汗も拭き取る。

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「タクシーの識を失われたり、座席を汚されたりしたら困るからです。病院に着くまで、息をく吐くことだけに集してください」

「嘘ばっかり……」

葵の唇が震えていた。 激痛に耐えながら、それでも私に対する敵と警戒を解こうとしない。 若い女特の、追い詰められたプライドが、彼女の言葉を尖らせていた。

「いいぶって……康平さんを取り戻すつもりでしょう。無駄よ……。私のお腹には、あのの赤ちゃんがいるんだから……。あなたが何頑張っても、に入らなかったものが……ここにあるのよ……!」

言葉を吐きすたびに、葵の顔が痛みに歪む。 私は彼女の青ざめた横顔を見つめた。

りよりも先に、奇妙な空虚さが胸を満たしていた。 この女は、本当に何も分かっていない。 自分がたった今、あのでどう扱われたのか。 に倒れ伏した自分を見て、康平がどんな目をしていたのか。 義母が配していたのは、彼女の命でも、苦痛でもなく、ただ「世体」と「佐藤の血筋」という記号だけであったことを。

「あの男が、あなたをどう見ていたか、見えなかったの?」

私は静かに言った。 灯が、定期なインターバルで葵の濡れた顔を照らしす。

「痛がるあなたを見て、康平は歩も寄らなかった。救急を呼ぶなと言った。それが、あなたとあなたの子どもをしている男の態度だとう?」

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「ち、違う……! 康平さんは、お義母さんに気を遣ってただけ……! 仕事で疲れてて、気が転してただけよ……!」

「そううなら、それでいいわ。でも、今はを閉じなさい。無駄に呼吸を乱せば、血流が悪くなって赤ちゃんに酸素がいかなくなる」

私の厳しい調に、葵は息を呑み、悔しそうに唇を噛み締めて黙り込んだ。

その、私のバッグのでスマートフォンがく振した。 画面を見ると、康平からの着信だった。 通話ボタンを押し、に当てる。

『おい、由。どこった』

受話器の向こうから聞こえてきたのは、微の焦燥もない、嫌な声だった。テレビのバラエティ番組の音がさく漏れ聞こえている。

「救急病院に向かっています。もうすぐ着きます」

『まったく、げさな真似しやがって。所の連が窓から見てたらどうすんだよ。いいか、診察代はお遣いから払っとけよ。俺のカードは使うな。それと、今夜はそのまま葵をあいつのアパートに送り届けて、おもどっかのビジネスホテルにでも泊まれ。母さんが興奮して血圧がっちまったんだからな』

隣にいる葵にも、その声は確実に届いていた。 葵の体が、ビクッと張るのが伝わってきた。

「……葵さんの容態が落ち着いたら、連絡します」

『連絡なんかいらねえよ。の朝、葵に直接話するから。お婚届に判を押す段取りだけ考えとけ』

ツーツーという無質な切断音が鳴り響いた。

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