"身重の愛人を抱き起こした私" 第7話
それは、私たちが暮らしているこの戸建て宅の、『産登記識別報』のコピーと、ある融業者が作成した『根抵当権設定承諾』の雛形だった。
このは、結婚目に購入したものだ。 購入、私の独代の貯から百万円をとして拠した。 残りのローンは康平の名義だが、の資比率があるため、私には相応の持分と財産分与の権利がある。 私の同なしに、このを勝に担保に入れたり、売却したりすることは法にできない。
だが、類に添付されていたメモには、康平の乱暴な跡でこうき殴られていた。
『妻との協議婚成、単独名義に変更。即座に担保提供、極度額千百万円で実』
全の血が、逆流するような覚に襲われた。
パズルのピースが、恐ろしい速度で噛みっていく。
康平が急に婚届を突きつけてきた理由。 昨夜、何の落ち度もない私を「子どもが産めない欠陥品」と罵り、刻もく追いそうとした理由。 そして、妊娠した葵をわざわざこのに連れてきて、見せつけるように義母に抱きつかせた理由。
のためではない。 まれてくる子どものためでもない。
自分の破滅な借を隠し、このを担保に入れてを面するためだ。 もし正式な婚調になり、財産分与や辺調査がわれれば、康平の巨額の借と横領まがいの策はのに晒される。
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私の百万円の返還を求められれば、その点で破産だ。 だから康平は、私に「浮気されたショック」と「妊の罪悪」を同に叩きつけ、精神に完膚なきまで叩きのめして、財産分与も慰謝料も放棄させた状態で、急ぎで協議婚に判を押させたかったのだ。
葵はそのための、ただの「具」に過ぎなかった。 週に絶を迫り、失敗したを、今度は「正妻を追いすための凶器」として再利用したのだ。
あまりの浅ましさに、吐き気が込みげてきた。
そのだった。
ギィ……と、廊の板がきしむ音がした。
私は素くスマートフォンのライトを消し、類を抱えたまま机のにを縮めた。 臓がの奥で鐘を打つ。
スリッパを引きずる音が、ゆっくりと斎のにづいてくる。 義母の音だ。
「……康平? まだ起きてるの?」
襖の向こうから、掠れた声が聞こえた。 ドアの隙から、廊のかりが差し込んでくる。 私は息を止め、暗ので指先をにく押し当てた。 もし今ここで見つかれば、類を取りげられ、力尽くでから追いされるかもしれない。まだ証拠の確保が完全だ。
音は斎ので数秒ち止まり、やがてトイレの方へとれていった。 バタン、とドアが閉まる音が響く。
私は震えるでスマートフォンを再びちげ、カメラのシャッター音を指で塞ぎながら、借の細、督促状、抵当権の類、そして康平のメモを、枚残らず鮮に撮した。
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撮を終え、類をミリの狂いもなく元の位置に戻す。 引きしを音もなく閉めた、トイレの流れる音が聞こえた。 私は素く斎を抜けし、音をてずに階の自へと滑り込んだ。
ドアに鍵をかけ、暗い部のベッドに腰をろす。 のひらには、じっとりとたい汗が滲んでいた。
涙は、滴もなかった。 、義母の嫌に耐え、康平の嫌に怯え、自分が悪いのだと自分を責め続けてきた々のみが、瞬にして徹なりへと精錬されていくのをじていた。
許さない。 私をゴミのように踏みつけ、を奪おうとしたこの男を、絶対にこのまま逃がしはしない。
◇
翌朝、午。 私は病院の売で買った温かい緑茶とミネラルウォーターをに、葵の病のにっていた。
軽くノックをしてドアをけると、葵はすでにベッドのでを起こしていた。 顔は昨夜より幾分ましになっていたが、目のには濃い隈が浮かび、髪は乱れていた。
彼女はでスマートフォンを握りしめ、画面をい入るように見つめていた。 その指先が、刻みに震えている。
「……おはようございます。体調はどうですか」
私が声をかけると、葵はびくりと肩をねげ、慌ててスマートフォンをシーツのに隠そうとした。