"身重の愛人を抱き起こした私" 第10話
だが、も康平の面の良さと狡猾さに付きってきた私には分かっていた。 が信じてきた欺瞞から抜けすには、もう段階の、決定な現実の打撃が必だということを。
「退院の続きは済ませてあるわ。入院費と昨夜の処置代、わせて万千円は私がて替えておいた。領収は私が持っておく。……今はもう帰りなさい。あなたのアパートまでタクシーを配してあるから」
「……なんで」
葵が掠れた声で呟いた。
「なんで、そこまで……」
「言ったでしょう。領収はで康平に請求するための証拠よ。円たりとも、あの男のい通りにはさせない」
私はちがり、バッグを肩にかけた。
「よく考えなさい、葵さん。あの男が次にあなたにどんな甘い言葉を吐くか、あるいはどんな脅しをかけてくるか。その、自分がどうするべきか。……連絡先は、領収の裏にメモして置いておくわ」
私は振り返ることなく、病のドアをけてにた。 のたい朝の空気が、病院の自ドアをくぐった私の全を包み込んだ。
◇
そのの午、私は自宅に戻るに、駅の雑居ビルにある法律事務所を訪れていた。
「――なるほど。これはまた、かなり悪質な事案ですね」
デスクの向こうで、弁護士の直先が類の束を繰りながら、く唸った。 先は私の学代の先輩であり、婚問題や銭トラブルを専に扱う、極めて腕のつ実務派の弁護士だ。
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「昨夜のうちによくこれだけの証拠を押さえましたね、由さん。康平氏のFXの追証通、消費者融からの督促状、そしてこのメモ……『妻との協議婚成、単独名義に変更。即座に担保提供』。完全に、図な財産隠しと詐欺な追いし作です」
「法に、あのを守ることはできますか」
私の問いに、先は鏡のブリッジを押しげながら、力く頷いた。
「守るどころか、康平氏のきを完全に止めることができますよ。由さんは結婚に百万円のを固財産から拠している。その資移の通帳記録が残っていれば、この戸建てに対する実質な持分権を主張できます。協議婚が成していない現段階で、々の方から裁判所へ『財産分与請求権を保全するための仮差押え』の申してをいます」
「仮差押え……」
「そうです。これが決定されれば、登記簿に仮差押えの登記が入る。そうなれば、どこの融関もも、このを担保にしてを貸すことは能です。康平氏が目論んでいた『由さんを追いしてを担保に千百万円を用てる』という計画は、その瞬に完全に破綻します」
先の言葉に、私の胸の奥で燻っていたたい炎が、静かに形を成していくのをじた。
「それから、もうつ」
私はバッグから、葵の健康保険証のコピーと、病院で医師から聞き取ったメモを取りした。
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「夫の交際相の件です。彼女は妊娠ヶで、康平の子だと主張しています。ですが康平は週に期絶をし、昨夜は私ので『跡取りができた』と見せつけてきました」
「典型なモラルハラスメントの具てですね」
先は徹な差しでメモを見つめた。
「相の女性・葵さんに対しても、由さんに対する貞為の慰謝料として百万から百万円の請求が能です。ですが……由さん、あなたはどうしたいのですか? 彼女も緒に破滅させたいですか?」
「いいえ」
私は迷わず首を振った。
「彼女を叩きのめしても、私のは返ってきません。それに、彼女自も康平に騙され、絶同にサインさせられようとしている被害者の面を持っています。もちろん、彼女のしでかした貞を許す気はありません。ですが、彼女にはもっと別の、相応しい役割を果たしてもらいます」
「別の役割?」
「康平の逃げを、完全に塞ぐための証です。認の調と、養育費の制執。あの男が最も恐れているのは、世体が崩壊することと、逃げられない銭義務を背負わされることです。先輩、続きをめてください。仮差押えの申してと、婚姻費用の分担請求。そして、必になったのための認請求の雛形も用してください」