"身重の愛人を抱き起こした私" 第14話
おが素直に『子どもが産めない体で申し訳ありませんでした』とをげれば、親戚たちもおを責めたりはしない。俺の顔をてて、しく判を押せ。分かったな」
台所での親戚用のお茶菓子を準備していた私は、を止めることなく、静かに答えた。
「ええ。は、すべてをはっきりさせましょう」
「ふん、聞き分けが良くて助かるよ。最初からそうしていれば、おも惨めないをせずに済んだのにな」
康平は卑た笑みを浮かべ、ウイスキーを気にみ干した。 この男はまだ何もらないのだ。 今、裁判所から自宅宛てに『仮差押決定通』が特別送達されているはずだが、それを康平が目にするのは、の会議のになる。私がの郵便受けから、すでに回収して弁護士に預けてあるからだ。
階の自に戻った私のスマートフォンが、く震えた。
画面をくと、葵からのメッセージが通だけ届いていた。
『、きます。逃げません。私とお腹の子のために、あのに全部償わせます』
私は画面を閉じ、く、静かな息を吸い込んだ。
クローゼットから、喪にも似た黒のシンプルなワンピースを取りし、ハンガーにかける。 そして、バッグのに、のための武器をつつ丁寧に収めていった。
病院のカルテの写し。 松永医師の見。
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康平の借リストと、斎から押収したメモの写真。 そして、弁護士が作成した、胎児認と制執認諾文言付きの公正証原案。
準備は、すべてった。
窓のを見げると、の気配を孕んだたいが、凍てつく夜空にくっていた。
「、すべてを精算しましょう」
暗い部ので、私は誰に言うでもなく、静かに呟いた。
曜の午。 の澄んだ差しが、佐藤のをたく照らししていた。
畳の広には、線の微かな匂いと、柱に飾られた掛け軸の苦しさが漂っている。 座には、佐藤の本筋の老である正雄叔父が、厳格な面持ちで座していた。 その両脇を、康平の従兄や縁の親族など、のが囲むように陣取っている。
正面の座に、私と康平、そして義母の敏子が座る筈になっていた。
だが、康平はすでに等な濃紺のスーツにを包み、勝ち誇ったような笑みを元に浮かべながら、正雄叔父のすぐくに座布団を引き寄せていた。 その隣で、義母はいレースのハンカチを目元に当て、今にも泣きしそうな「劇の母親」の芝居を完璧にえている。
「皆さん、本はお忙しい、急なお集まりをいただきまして申し訳ありません」
義母が、わざとらしく掠れた声を絞りした。 の空気が、しんと静まり返る。
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「本来ならば、き夫の回忌の打ちわせでお集まりいただくはずでした。けれど……それよりも先に、佐藤の事として、親族の皆様にお話ししておかなければならないことがございますの」
義母はちらりと私を睨みつけると、げさに肩を落としてみせた。
「実は、由さんから……このをてきたいと、婚を申しられたのです」
親族たちのに、くざわめくような揺がった。 正雄叔父だけは微だにせず、鋭いを義母に向けている。
「急にていくとは、どういうことだ、さち子さん」
親戚のが怪訝そうに尋ねると、待っていましたとばかりに康平がを乗りした。
「俺から説します、叔父さん」
康平はいため息をつき、いかにも妻を気遣い、傷しきった夫の表を作った。
「結婚して、由は妊に悩み続けていました。俺も母さんも、子どもなんていなくても、で支えっていけばいいと何度も励ましたんです。ですが、由の気負いは像以にく……『自分は佐藤の跡取りを産めない欠陥品だから、これ以迷惑はかけられない』と、毎のように取り乱すようになってしまいまして」
澱みなく紡ぎされる、完璧な虚構だった。
「夫として、男として、これ以彼女を苦しめるのは残酷だと判断しました。由のを尊し、自由にしてやることが、俺にできる最の優しさだとったんです。
……なあ、由」
康平が、私を見ろした。