"義母が遺した二十年の通帳" 第6話
私が実の母から昔もらった、物のブローチ。
そして、冊のの通帳。
「……なんだ、これ」
浩がその通帳を拾いげた。 元の方の、何の変哲もない緑の通帳だった。 表には、私の名が印字されている。
『サトウ ユミ』
「おの隠し座か……? へえ、やっぱり持ってたんじゃないか」
浩は嘲笑を浮かべ、親指でペラリと通帳のページをめくった。 を引きしてコンビニへるつもりだったのだろう。 だが、最初のページをいた瞬、浩の指がピタリと止まった。
その顔から、嘲りの笑みがサーッと引いていった。
「……は?」
浩の喉から、掠れた声が漏れた。 と真奈も、異様な空気を察して部の入りから覗き込んでいる。
「おい……これ、なんだよ……」
浩のが、刻みに震え始めていた。 私はクローゼットのにち尽くし、ただたい目で夫を見つめていた。
通帳には、械の正確な印字が然と並んでいた。
毎。 の支と同じ、あるいは浩の料と同じそのに、寸分の狂いもなく記帳された数字。
『オアズカリ イレコ 30,000』 『オアズカリ イレコ 30,000』 『オアズカリ イレコ 30,000』
振込元の名には、カタカナでこう印字されていた。
『サトウ シズエ』
くなった義母の名だった。
毎、万円。 で万円。 で百万円。
浩は取り憑かれたように、震える指でページをめくり続けた。
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ページ、ページ、ページ。 の擦れる乾いた音だけが、息の詰まるような部に響いていた。
印字は、義母が倒れて入院する直の、ヶまで途切れることなく続いていた。 分。 度の滞りもなく積みねられたその。
そして、最終ページの。 現残の欄に印字された数字を、浩は穴がくほど見つめていた。
『7,230,000』
百万円。
そして、その膨な入記録の横にある『オヒキダシ(支払)』の欄には、 最初から最まで、ただのも、円の数字も刻まれていなかった。
引きし履歴、ゼロ。
、毎義母から振り込まれ続けたに、私は度としてを触れていなかった。
「お袋が……」
浩が顔をげ、血った目で私を睨みつけた。 その顔は青ざめ、唇は引きつり、額にはたい汗が滲んでいた。
「なんで……お袋が、おに毎万もを振り込んでるんだ……?! なんでも……! なんでおは、このを円も使ってないんだよ!!」
りと、恐怖と、得体のれない猜疑が入り混じった浩の叫びが、え切った寝に霊した。
に散らばったの真んで、私はただ、静かに呼吸をしていた。 、誰にもかれることのなかったい扉が、いま、無残な音をててき始めていた。
寒が窓を揺らし、え切った寝に浩の掠れた鳴り声が反響していた。
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には、私のクローゼットから引きずりされたカーディガンや着が無残に散らばっている。 その央に、古びた缶からこぼれ落ちた緑の通帳が冊。
浩はそれを両で鷲掴みにし、指先を刻みに震わせていた。 の擦れる乾いた音が、静まり返った部にやけに々しく響く。
「……嘘だろ。なんだよこれ、おい……」
めくられたページには、分のインクの跡。 毎。 万円。 振込名、サトウ シズエ。 そして、の最終残――百万円。
「父さん、何があったの……?」
廊の暗がりから、真奈がおずおずと顔を覗かせた。 そのろには、腕組みをしたが眉をひそめてっている。 は父の尋常ではない取り乱しように気圧されながらも、に散らばる異様な景に目を奪われていた。
「おい、真奈、……見ろ、これを見ろ!」
浩は憑き物が落ちたような、いや、狂気じみたを瞳に宿して叫んだ。 通帳をの顔のに突きし、乱暴に指で叩く。
「おたちの祖母さんが……俺の母親が、この女に毎万ずつ、もを振り込み続けてたんだ! 計で百万以だぞ! なのにこの女、今まで度も、言も俺に言わずに隠し持ってやがったんだ!」
真奈の目が丸くなった。 スマホを握っていたが止まり、通帳の数字に釘付けになる。
「……な、ななひゃくまん?!」
「百万……? ばあちゃんが、母さんに?」
も息を呑み、わず歩部に踏み込んだ。