"義母が遺した二十年の通帳" 第9話
私は冊目、冊目のファイルを次々と机のに放りした。 バサバサとが波打ち、何百枚もの領収証がのに晒される。
「、あなたが私にきたいと言った、入学と授業料の補填にいくらかかったかっていますか? 私がスーパーの朝品しのパートと、夜のオフィス清掃を掛け持ちして貯めた、私のへそくり百万円です」
の顔がピクリと引きつった。
「真奈、あなたがカナダにきたいと言った、断ったのは事実です。でも、なぜ余裕がなかったのかっていますか? ちょうどその、お父さんが友達の保証になって背負った借百万円を、このから括で肩代わりして返済したからです! そうしなければ、このが差し押さえられるところだったからですよ!」
「な……」
真奈が信じられないものを見る目で浩を見た。 浩は顔面を蒼にし、額から脂汗を流しながらをパクパクとさせている。
「嘘だろ……父さん、借なんてしてたの?」
「ち、違う! あれは頼まれて仕方なくだな……!」
「違わないわ。借用も、私がからろして返済したの振込受領証も、すべてここに綴じてあります」
私は容赦なくページを捲り、浩の直の署名が入った借の細を真奈の目のに突きつけた。
「私が自分のために使ったおは、こので円もありません。
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はいつもパート先の制か、バーゲンで買った千円のブラウス。美容院は半に度、千百円のカット専。化粧はドラッグストアの百円のハトムギ化粧です。そんな活を続けて、あなたたちの塾代、ピアノの謝、学の入学、自学の費用……すべて私が眠を削って稼いだパート代から補填してきました」
静まり返った部に、私の声だけが徹に響く。
「そして極めつけは、お義母さんの介護です」
私は最の冊、番分いファイルをいた。 そこには、介護保険の利用細、おむつや尿取りパッドの領収証、介護用ベッドのレンタル料、子の購入費、そして毎週の往診代の領収証が、几帳面に貼り付けられていた。
「にお義母さんが認症を発症してから、かかった費用です。に平均して万円から万円。浩さん、あなたが円でも介護費用をしてくれましたか? 『おのやり繰りがだからりないんだ』と言って、円もさなかったでしょう」
「う……ぐ……」
浩は喉を鳴らし、拳を握りしめたまま俯いた。
「も真奈もそうです。おばあちゃんのの世話を伝ったことが度でもありますか? おばあちゃんが粗相をした、あなたたちは『汚い』『臭い』と言って自分の部に閉じこもった。夜に徘徊するおばあちゃんを探しに、真ののをり回ったのは誰ですか? 私です。
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すべて、私です」
私はテーブルの央にある、あの緑の通帳を指差した。
「私はこのおに、、度もをつけませんでした。々の活がどれほど苦しくても、あなたの借を返すために自分の定期預を崩したでも、お義母さんのオムツ代がりなくてを抱えた夜でも、この通帳から円も引きしませんでした」
「……な、なんでだよ」
がかすれた声で呟いた。
「使えばよかったじゃん……そんなにがなかったなら、なんで使わなかったんだよ……!」
「使えなかったからです」
私はの目をまっすぐに見据えた。
「このおは、お義母さんが私にくださったものです。活費のしにするためでも、あなたたちの学費にするためでも、このの借を埋めるためでもない。お義母さんが、ある確な志を持って、私個に託されたおだからです」
「言い訳するな!」
沈黙に耐えかねた浩が、突然ちがって咆哮した。 顔を真っ赤にし、首筋に青筋をてて私を睨みつける。
「帳簿がどうだの、過の苦労がどうだの、そんなの関係あるか! 結局のところ、お袋がおにを渡してたのは事実だろ! 認症の寄りからを巻きげた疑惑は消えてないんだよ! これは贈与税の脱税かもしれないし、横領かもしれないんだ!」
浩は完全に追いつめられ、論理も何もない言いがかりを喚き散らしていた。