"義母が遺した二十年の通帳" 第12話
「叔母さんはお袋の実の妹だ。お袋がどんなで、佐藤の計がどう回っていたか、部者のおよりよっぽどっている。……昨夜は話越しで驚いてあんな言い方をされたが、顔をわせてちゃんと順序てて説すれば、おがやってきたことがいかに異常か、叔母さんだって理解するはずだ」
浩は自分に言い聞かせるように、でまくしてた。 その声の底に張り付いた怯えを、必に『』のプライドで塗り潰そうとしているのが痛々しいほど伝わってきた。
「そうだよね」
真奈が、すがるような声で同調した。
「おばあちゃん、最の方は物忘れもひどかったし……。お母さんがうまく誘導して、毎振り込ませてたって考えるのが普通だよね。叔母さんだって、内の方をしてくれるに決まってる」
「ああ」ともを鳴らした。 「法律にも、以の贈与でも特別受益として持ち戻しを主張できるケースはあるらしいしな。どのみち、母さんがで使える筋いのじゃない。親族ので黒ハッキリつけてもらうだけだ」
はそうやって、自分たちに都のいい氷のような理屈を必にねわせていた。 そうでもしなければ、昨夜芳叔母さんに叩きつけられた「恥をりなさい」というのみに押し潰されてしまうからだ。
広告
私は何も言わず、湯呑みを両で包み、温もりを指先にじながら静かに計を見げた。
午分。
砂利を踏む、ゆっくりとした音がから聞こえてきた。 続いて、カチリと扉がく乾いた属音。
浩が弾かれたようにちがった。 と真奈も背筋を伸ばし、顔を見わせる。
ピンポーン、となチャイムが度だけ鳴った。
「俺がる」
浩が喉を鳴らし、乱暴に咳払いをしてから玄関へと向かった。 い引き戸をける音がして、浩の猫なで声が廊に響いた。
「あ、叔母さん! 寒い、わざわざすみません。さあ、どうぞへ……」
「……靴を脱ぐに、ひとつ聞くよ」
玄関から返ってきたのは、浩の媚びた声を刀両断にする、え切った音だった。
「この悪臭は何だい。ゴミを腐らせたような、酷い匂いじゃないか」
「えっ……あ、いや、これは、その、ゴミしのタイミングがちょっと……」
「台所がどうなっているか、がらなくても見当がつくね。まったく、みっともない」
パタパタと、容赦のない音が廊をんでくる。 リビングのドアがき、芳叔母さんが姿を現した。
歳。 くなった義母の静よりつの妹だ。 柄だが背筋は本ののように真っ直ぐに伸び、黒いウールのコートにを包んだ佇まいには、を寄せ付けない凛とした威厳があった。
広告
には、のロゴが入ったな革の類鞄を提げている。
「叔母さん、おはようございます」
私がちがってくをげると、芳叔母さんは私を見つめ、痛ましそうに眉をひそめた。
「由美さん、顔が悪いよ。……こんな寒々しいで、よく耐えてきたね」
その言だけで、浩の顔から血の気が引いた。
「お、叔母さん、座ってください。お茶を……」
「お茶ならいらないよ。こののものは、杯だって喉を通りそうにないからね」
芳叔母さんは浩が引いた座の子を無し、テーブルの端、私の向かい側の席に腰をろした。 袋をすと、その鋭い線がテーブルのの通帳と、積まれた計簿のへと落とされた。
と真奈は、まるで蛇に睨まれた蛙のように縮こまり、挨拶すらできずにち尽くしている。
「さて」
芳叔母さんは、机の央に両をねて置いた。
「昨夜、浩からずいぶんと威勢のいい話をもらったよ。『由美さんが姉さんのを騙し取っていた』『佐藤の財産を奪おうとしている』……だったかね。浩、、真奈。おたち、揃って由美さんを棒扱いしたそうだね」
「叔母さん、言葉のあやですよ!」
浩がたまらずを挟んだ。 ったまま、テーブルに両をついて必にを乗りす。
「でも、事実なんですよ! 現にここに百万以のがあるんです! お袋のから毎万、も! 俺たちに言の相談もなくですよ?! お袋は晩、が怪しかったんだ。