"義母が遺した二十年の通帳" 第14話
「誰の稼ぎで飯をっているんだ」という鳴り声、気に入らないことがあれば平打ちをばし、族の犠牲のに胡座をかいて恥じないあの男の姿を、私はぬほど憎みながら、世体と子供のために逃げすこともできずに老いてしまいました。 そして、その呪いのような勝さは、私の育て方が悪かったせいで、そっくりそのまま浩、おに受け継がれてしまった』
「お、お袋……」
浩のから、掠れた呟きが漏れた。 だが、芳叔母さんの声は止まらない。 切の容赦もなく、義母の言葉を紡ぎ続ける。
『ののことを、私はたりとも忘れたことはありません。 由美さんがこのに嫁いできて、まだ真奈がまれる、がまださかった頃のことです。 由美さんが夕に作った豚汁のが、おの父親の好む濃い付けよりほんのしかったというだけの理由で、浩、おは何をしましたか。 おは「こんないもんがえるか」と鳴り散らし、い汁が入ったお椀を、由美さんの元に投げつけましたね』
私は、息を呑んだ。 その景が、数の歳を瞬でび越えて、目のに鮮に蘇ってきた。
畳のにび散ったい豚汁。 油で汚れた私の首。 割れた漆器の破片。 「気の利かない嫁をもらうと息子が苦労する」
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とで笑った義父。 そして、歳だった浩の、傲で酷な嘲笑。
私は幼いを背に隠しながら、たい雑巾を握りしめ、ただひたすらに「申し訳ありません」と畳に額を擦り付けて謝り続けた。 涙がボロボロとこぼれて、雑巾を濡らした。 あの、台所の暗がりで、義母がどんな顔をして私を見ていたか。
は、そのの義母のを赤裸々に暴きてていた。
『あの夜、畳にいつくばってい汁を拭き取っていた由美さんの震える背を見て、私は血の気が引くいがしました。 そこにいたのは、かつて夫に同じように虐げられ、泣き寝入りをしていたの私自だったからです。 このは、から入ってきた優しい女をい物にすることでしか成りたない、呪われたなのだと、私はそのようやくいりました。 私の息子は、妻をとしてではなく、ただの無償の召使いとしてしか見ていない。 そして、このままでは由美さんも、私と同じように逃げを失い、を殺され、こので骨の髄まで搾り取られてボロボロになってしまう。 そう確信した翌、私はへきました』
芳叔母さんの声が、微かに震えを帯び始めた。
『あの通帳に毎振り込んできた万円は、おたちが疑っているような、政婦代でも、介護への報酬でもありません。
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あれは、私が由美さんのために用した「脱資」です』
「だっしゅつ……しきん……?」
真奈が、呆然と呟いた。
『由美さん。私はあなたに、毎万円の自由を渡したかった。 夫に鳴られ、理尽に耐え、もう歩も歩けないとうほど絶望した、 「私にはいつでもこのを捨てて逃げせるおがある」 そのことだけをの杖にして、きてほしかったのです。 おたちがどれほど由美さんを蔑ろにしようと、彼女の元には、おたちのが絶対に届かない、彼女だけの確固たる居所があるのだと、教えてあげたかった。 々万円。私がもらう雀の涙のような国民から、を着も買わず、化粧品も買わず、病院代を削って捻りした、私の命の端切れです』
リビングに、静かな嗚咽が漏れた。 それが自分のから漏れたものだと、私はすぐには気づかなかった。
。 義母が、私の名義で作られたあの緑の通帳を、さな印鑑と緒に私ののひらに押し付けてきたのこと。 『由美さん、これはね、あなたのものよ。浩にも、お父さんにも絶対に内緒にしなさい。いいわね、何があってもこのに使っちゃ駄目よ』 義母はそう言って、私の荒れたを固く、痛いほどに握りしめてくれた。 あのの義母の澄んだ瞳の理由が、のを経て、いま胸の奥底に濁流となって流れ込んできた。
『浩。おは昨夜、由美さんに向かって「おを養ってやった」と言ったそうですね。 笑わせるんじゃないよ。